BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ドラえもんで学ぶお金の話

 最近お気に入りになっている「脱社畜ブログ」様で、ドラえもんについて「もしもボックスで残業のない世界を作ってみたい」という話題が取り上げられていました。

もしもこの世から「残業」が完全になくなったら - 脱社畜ブログ

 話の中で取り上げられている「お金の存在しない世界」「あやとりのうまさで社会的・経済的地位が決定される世界」はそれぞれ「お金のいらない世界」(てんとう虫コミックス13巻)と「あやとり世界」(同15巻)ですね。前者は何かを買う時にお金を「払う」のではなくお金を「もらう」世界。つまり、お金を持っているほど貧乏という世界。家計が赤字の野比家は押入れの中に襖が外れそうなほどパンパンに札束が詰め込まれ、スリにやられたパパは懐に札束を押し込まれていた・・・という調子。後者はあやとりがうまい人ほどもてはやされており、あやとりがプロスポーツになっていて選手は高額の年俸で契約している・・・という世界。あやとりの天才であるのび太にとってはまさに天国でしたが、手の構造ゆえにあやとりができないドラえもんが頭にきて元の世界に戻してしまう、というオチ。ドラえもんのび太を幸せにするために未来から来たんだから、あれでよかったんでしょうに・・・。

 それはともかく、ドラえもんを読んでいると「お金のいらない世界」に限らずお金絡みの話がけっこうよく出てくることに気付かされます。主にお小遣いやお年玉に絡んでくる話ですね。お金の問題は大人の問題と思われがちですが、自由に使えるお金が大人以上に制約される子供にとっても重大な問題です。ドラえもんで描かれたお金絡みの作品として私が特に秀逸と思うのは、「お金のいらない世界」に加えて下記の三編ですね。

・「してない貯金を使う法」(てんとう虫コミックス4巻)
 機関車のプラモが欲しいのび太だが、貯金がない。パパに相談すると「肩たたきをすれば毎日10円あげるから半年続ければプラモ代が溜まる」と持ちかけられるが、今すぐ欲しいのび太はとりあわない。そこにパパの弟(この話にしか出てきませんが)がやってきて、高級ゴルフクラブや車を自慢する。安月給のはずの弟がそんなものを変えることを不思議がるパパに月賦で買ったという弟。これにひらめいたのび太はパパの肩たたきの話を引き受け、お金だけすぐに手に入れようとタイムマシンで半年後に向かうが・・・。
 ローンの仕組みについて、その落とし穴まで含めてわかりやすくとりあげた秀作。まぁ個人的に一番のポイントは、ラストのコマでなぜかあさっての方向を向いているドラえもんの白け顔ですが。

・税金鳥てんとう虫コミックス22巻) 
 スネ夫との経済格差を嘆き、なんとか平等にできないものかとドラえもんに相談するのび太ドラえもんが出したのは、所持金額に応じて一定の税金を徴収する「税金鳥」という道具。税金鳥のび太たちの間で運用を開始されるが・・・。
 税金の仕組みとともに、巧みに税金逃れをするスネ夫の脱税テクニックまで描かれるすごい話。結局お金持ちはうまいことやって税金を逃れ、苦しむのは貧しきものばかり・・・という縮図。

・大富豪のび太てんとう虫コミックス32巻)
 偶然一万円を手に入れたのび太。さっそく買い物に行こうとするが、偶然耳にしたパパたちの世間話から、昔は今よりも物価が安かったことを知る。のび太は自分の一万円はそのままに、もしもボックスでものすごく物価の安い世界を作るが・・・。
 物価についてわかりやすく描いた作品。この話を読んでいると、物の価値というものがばかばかしく思えてきます。

 世知辛いお金の世界への入り口として、上記3編は子供がそれを知るうえでわかりやすいテキストでしょう。本当にF先生は偉大です。