BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

仮面ライダーSPPIRITS画集「改造人間」

仮面ライダーSPIRITS画集『改造人間』

仮面ライダーSPIRITS画集『改造人間』

 「仮面ライダーSPIRITS」第一話を今はなきマガジンZで読んだ時から早十年以上。村枝賢一先生の手によるまさに魂の込められた絵を見るたびに、いつか画集としてまとめてくれないかなぁ、と思い続けていましたが、ようやくその夢がかないました。

 まず冒頭を飾るのは、10人の仮面ライダーの素顔をポートレート風に描いた「10人の肖像」。SPIRITS本編での素顔のライダーたちはそれぞれオリジナルの役者さんの特徴を残しつつも村枝流にアレンジされて描かれていますが、ここでは完全にオリジナルの役者さんたちの出演当時の顔を描いています。改めて見ると、SPIRITSでは隼人は陽気さや人当たりの良さを、志郎はクールさを、茂はワイルドさを、といった具合にそれぞれの持ち味をデフォルメされていますけど、結城はオリジナルの山口豪久氏とほとんど同じであることがよくわかりますね。

 その後はコミックスや雑誌の表紙などを中心に、これまで描かれたカラー原稿が全て網羅されています。どれも素晴らしいイラストですけど、やはり本編でのカラー原稿が最も印象深いですね。第一話を読んだ時に心を震わされた本郷の変身シーンと「今夜は俺とお前でダブルライダーだからな」のシーン、アマゾン編での大切断を受けて頭がパックリ割れたトカゲロイドを背にヴィクトルを抱きかかえるアマゾン(この一枚にアマゾンが体現する大自然の荒々しさとすべてを包み込む優しさの二面性が凝縮されているように思います)、敵の攻撃でボロボロになりながらも不敵にいつもの名乗りを上げるストロンガー・・・ああ、どうしてこんなにも魂を震わせる絵を描いてくれるのでしょうか、村枝先生は。あと、ダブルライダーが背中合わせになって周囲を取り囲む怪人軍団に向き合っているイラスト。背景に描かれた怪人たちがシルエットだけでガニコウモルだ、ヒルカメレオンだとわかってしまうあたりで、思わぬところでゲルショッカー怪人のデザインの秀逸さを実感してしまいました。見切れてしまい右手だけが描かれているイソギンジャガーがご愛嬌。

 どれも甲乙つけがたいイラストばかりですが、あえて一番好きなものを挙げるとしたら、震災被災地の子供たちとともに朝日を見つめる1号ライダーの背中を描いたイラストでしょうね。コミックの扉絵でこのイラストを見たときは思わず涙が出そうになりましたが、今回より大きなサイズでこのイラストを見られただけでも、この画集を買った価値はあったと思いました。