BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

小説 仮面ライダーW 〜Zを継ぐ者〜

 読み終わりました。これでようやく3冊全部を読み終えました。

 著者はW本編のメインライターである三条陸氏。さすがにメインライターが手掛けただけあって(まぁこれはカブトもそうだったんですが・・・)、本編と全く同じ雰囲気、同じノリで展開される物語を本編を見ていた頃と同じ気持ちで楽しむことができました。今回の小説仮面ライダーシリーズの中でもこの作品だけ本編と同じ命名則によるサブタイトルがついているのも、気合を感じさせます。「Z」は本編では使われたことのないイニシャルでしたね。

 今回の作品の主役と語り部を務めるのはフィリップ。言うまでもなくWの主人公は翔太郎とフィリップの2人ですが、足で捜査をする翔太郎と安楽椅子探偵のフィリップという配置だっただけに、どちらかというと本編では動きの多い翔太郎の方に目が行きがちでした。本編でもフィリップがメインを張る回は何度もありましたが、今回の彼はひょんなことから翔太郎の代わりとして彼の名を名乗り捜査をすることに。最初から最後までアクティブに動き回るフィリップの姿は、読んでいて新鮮でした。

 今回鳴海探偵事務所が挑むのは、風都でも有数の資産家一族の遺産を巡る脅迫事件。サスペンスでは定番中の定番と言えるシチュエーションですが、意外にもWでは使われたことのないものですね。とはいえ、そこはやっぱりW。本編の話よりは複雑ではあるものの、ドーパントの正体とかはやっぱりある程度早い段階で予想がつきますね。翔太郎の代わりとして翔太郎流のやり方で事件解決に挑むもなかなかそううまくはいかず、翔太郎にはあって自分にはないものを改めて痛感するフィリップの姿を見ていると、やはりこの2人は2人で1人の仮面ライダーなんだなぁと思えます。以下、雑感。

  • 時系列的に言うとこの話は本編の32話から35話の間のどこかで起こった話というのが、フィリップや照井のセリフから読み取れます。
  • イナゴの女、ガイアプログレッサー、シュラウドの意図する究極のW(サイクロンアクセルエクストリーム)など、この話のあとの話とちゃんと伏線をつなげているのが見事です。
  • シュラウドから渡されたロストドライバーを使って、フィリップが単独で仮面ライダーサイクロンに変身。時系列的に見ると、翔太郎の仮面ライダージョーカーよりも先に単独変身していたことになりますね。このロストドライバーも、後の話につながっていきます。
  • 今回の話に登場するドーパントたちの中のある一体の登場に「うわっ、危なかった・・・!」と内心で汗を拭いました。私が自分のサイトに掲載しているWの小説に、同じ名前と能力を持つドーパント(正確には似て非なるものですが)を出していたため。先に書いていてよかった・・・。
  • やっぱりというかなんというか、今回の作品にも悪女が登場。本当に、Wに登場する女性の悪女率は異常です。本編を見ていたころは、女性キャラが出てきたらまず悪女と思えとさえ思っていました。
  • あるシーンで翔太郎が発する悲鳴が「アッー!」に見えてしまった・・・。

 ・・・最後のは本当にどうでもいい雑感ですね。とにもかくにも、Wらしいエンターテイメント性に富んだ作品でした。ハードボイルドというよりは浪花節的な終わり方もまた、Wらしいです。