BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

未来の働き方を考えよう

未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる

未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる

 ちきりんさんの本を読むのは、これで2冊目。

 読み始めてすぐ、政府が年金の支給開始年齢の引き上げのために企業に求めている雇用の延長によって、将来的には定年が70歳になるという事実に、いまさらながらゾッとしました。まだその折り返し地点にも達していないのに、これから先生まれてから今までと同じぐらいの時間を働かなければいけないのかと思うと・・・。昔のように55歳で定年ならば、そのあとに楽しみが待っていると思ってまぁなんとか我慢できたかもしれませんが、70歳でようやく労働から解放されたところで、果たしてそのとき人生を楽しむために必要な力が自分にどれだけ残されているのか。年を取れば病気にかかるリスクは高まるし、どんなに元気な人でも肉体の衰えからは逃れられず、若い頃のように体を動かすことはできず、思考も柔軟性を失っていく。そもそも、70歳を迎える前に死んでしまう可能性だって十分あります。

 20代から70歳まで同じ仕事をやり続けることは幸せなのか、そもそも可能なのか? そこで著者のちきりんさんが提唱するのが、「最初から職業人生は二回ある」と考え、人生を前半と後半に分けてその境目である40代で、今までの人生を振り返ったうえで働き方を選びなおす、というもの。世間のことがろくにわからないままほとんど強制されるように就職しなければならない20代と違って、40代ともなれば自分のやりたいことややりたくないこと、得手不得手がずっとわかるようになり、また「いつまでも自分は若くはないのだ」という事実が現実のものとなって迫ってくるので、残された人生何をするべきなのかをより真剣に、具体的に考えられるようになる、というわけです。病気を患うリスクは依然としてあるものの、誰もが長生きする(あるいは、長生きさせられる)ことが保障されたこの国で人生を設計していくうえで、非常に現実的な考え方だと思います。おそらくこれからの世の中には、自然とこういう生き方を選ぶ人が増えていくでしょうね。

 ただ、自分にとっては実践はなかなかな難しそうだなぁ・・・というのが正直なところ。ちきりんさんが友人の転職相談に乗った時、「あなたはなにがやりたいの?」と聞いたら「大半の人間は特にやりたいことなんてないんですよ」と返されたという話が本の中に出てきます。「これさえできればあとはどうでもいい。金なんて後からどうにでもなるだろう」と踏ん切りをつけてのめりこめるほどの何かさえ得られれば、これからの世の中は勝ったも同然なのでしょうけれど、それを手に入れられることを「とてもラッキー」とちきりんさんが書いている通り、それは結局運次第なのでしょうか。これからの社会でやりたいことのない人の進む道はどんどん険しくなると書いている一方で、それを見つけられることが「幸運」と書かれると、暗澹たる気分になるのですが・・・。

 自分にとってのやりたいことといえば、特撮に関する何かを書くこと。ライダーをはじめ特撮の小説を書き続けてきたうちのサイトはこの9月で開設10周年。これだけ続けられれば「俺はこれが好きなんだ」と言える自信は確かにありますが、それだけで新しい生き方に踏み出すことのできない自分がここにいます。