BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

牙狼 -魔戒ノ花- 第11話感想

 かつては売れっ子だったものの、今や才能の限界を指摘され、独立しようとするアシスタントにまで嘲られる漫画家にホラーが憑依し、漫画家たちを次々に捕食してその才能を我が物としていく。捕食対象をマンガに変え、丸めた紙のようにして食べてしまうシーンや、オノマトペを武器に変えるどこかのスタンドのような攻撃など、徹底的に「マンガ」にこだわった描写が見ていて面白かったですね。描いたキャラクターたちに攻撃させるのも、キャラが実体化するのではなくあくまで紙に描いた平面的なものと雷牙が立体的に戦うのも新鮮でした。結界の中では自分の描いたマンガの通りに物事を進行させるというチートのような能力の前に、これまでほとんど無敵を誇った雷牙も危ういところに追い込まれました。そのピンチを覆したのも、インクを使って原稿を汚す、という漫画的な手法でした。

 初めは純粋に描くのが好きだから、作品を読んでもらえることが好きだから描いていた人が、評価されて名声を得るもそれに縛られ、売れることばかりを求めて他人の才能をねたむようになるというのは、ネットの片隅で細々と作品を晒しているとはいえ、創作をしている人間としてはやはり身につまされますね。どんなに売れっ子になっても「ただ読んでもらうためだけに描いている。それ以外はどうでもいい」と言い切る露伴先生のような人になりたいものです。マユリの言葉はせめてもの救いになったのか。同じく絵を描くことを愛していた母を持つ雷牙の言葉も印象的でした。