BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

小説 仮面ライダードライブ マッハサーガ

 鎧武編が発売されて間もない小説仮面ライダーシリーズですが、早くもドライブ編が発売。鎧武編も光実が主役のようなものでしたが、今回は完全に剛が主役で、進ノ介の出番は少なく、TV本編後の物語なので変身もしません。過去のロイミュード犯罪に関わった人間たちも多数登場しますので、本編を見ておくことを推奨。特にTV27・28話は大きく関わってきます。

 舞台となるのは進ノ介が仮面ライダーゴーストと共闘して事件を解決し、霧子と結婚してから二年後の2017年12月。結婚式の後のパーティーの最中に爆破予告事件があってパーティーが台無しになり、その一年後には進ノ介と霧子の間に第一子が誕生。ようやく状況が落ち着いて二人の二年目の結婚記念日を気にパーティーのやり直しを行うことになり、海外を旅していた剛も帰国して出席することに。そんな中、過去のロイミュード事件を模倣した事件が発生。再び終結した特状課メンバーをあざ笑うかのように続発する事件を解決するため、剛はかつてある事件で関わった人物との接触を試みるが・・・。

 ドライブの小説でありながら、主役は進ノ介ではなく剛。一見奇異にも見えますが、主人公である進ノ介は最初から最後までほとんどブレがなく、父親の死にまつわる過去の因縁にもきっちりとカタをつけている。一方で剛はといえば、自分がロイミュードの生みの親である蛮野博士の息子であることを知り、その事実を姉に知られたくないばかりに焦り、その焦りを幾度も敵に利用され、自分を友と思ってくれていたチェイスを助けることもできなかった、という具合に失敗と後悔の連続。過ちを犯したという点については鎧武の光実と同じですが、TV本編後に劇場版や小説でそれを乗り越えて前に踏み出す姿を描かれた光実と違って、剛の場合はMOVIE大戦でもあまり活躍はなくそうした姿は描かれませんでした。そうした経緯を考えれば、今回の小説の主人公が進ノ介ではなく剛であることは自明の理といえるでしょう。今回の小説では、TVでは描かれなかった彼が仮面ライダーマッハになるきっかけとなった、アメリカでの親友の死にまつわる事件もふまえ、苦い過去を乗り越えて再び仮面ライダーになろうとする、まさに見てみたかった新たなスタートダッシュを切る剛の姿を見ることができます。かつては嫌悪の対象でしかなかったロイミュードに対する考えも、チェイスやハートたちの生きざまを見たことで大きく変わり、彼が今作品のクライマックスで変身する新たな姿にはそれが結実しています。

 今作品には「ドライブサーガ 仮面ライダーチェイサー」の内容も関わっており、さらに11月にリリースされる「仮面ライダーマッハ」にも続いていく予定だとか。帯には剛を演じた稲葉友氏のコメントも寄せられており、「始まりとこれからの物語」とあります。マッハの「これから」の物語に、今から期待しています。