BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

今週の仮面ライダービルド 第21話感想

 これ以上龍我を暴走させないため、禁断のアイテム、ハザードスイッチを使用する戦兎。しかしそれが、他ならぬ戦兎にとって最悪の結果を招くことに・・・。

 リアルタイムでTwitterを見ていても視聴者が一斉に騒然となった衝撃回。三羽烏に立った死亡フラグ、明らかに暴走のリスクを孕んでいるハザードスイッチと、こうなる展開は想像の範囲ではありましたが、実際に映像として描かれたのはこちらの想像を遥かに上回る残酷なものでした。誰よりも戦争に加担することに否定的だった戦兎が、3人のライダーの中で一番最初にこの「戦争」で人を殺してしまうという、残酷すぎるこの皮肉。戦兎を演じる犬飼さんの、心ならずも殺人を犯してしまった人間の演技があまりにも真に迫っていて、これを日曜の朝に流していいのかと心配になるほどでした。

 ですが、それによって「これが戦争なんだ」というのは子供にもわかるぐらい伝えることができたと思います。家族を守るため、国家の繁栄のため、他国の支配からの独立を勝ち取るため。世界ではいろいろな大義のために戦争が行われ、今もまたどこかで行われていますが、どんなお題目を掲げようと、そこで行われるのは詰まるところ人と人との殺し合いに過ぎない。本来はヒーローであるはずの仮面ライダーでさえ、ひとたび戦争という状況の中に放り込まれれば、殺すか殺されるかの二者択一しか許されない。戦争に参加するということは、結局のところ人殺しになるということ。そのことを真に理解せぬまま戦争に身を投じてしまった戦兎は人を殺した罪の意識に押しつぶされ、龍我は敵である猿渡たちに「謝ってしまう」。一方仲間を殺されたはずの猿渡は、それを骨身にしみて理解しており、納得ずくで戦争をしに来た以上殺されたところで相手を恨むつもりはないが、感情は別にして仲間を討たれたものとしてその敵討ちを戦兎に告げる。戦兎や龍我のように戦争の何たるかを理解せぬまま戦争に身を投じるのも悲劇ですが、猿渡のようになってしまうのも、また哀しいものですね。仮面ライダー龍騎もライダー同士の壮絶な殺し合いの物語でしたが、少なくともそれぞれのライダーは、自分たちがそれぞれに持つ願いのために戦っていた。戦兎や龍我には、そんなものを抱くことすら許されない。個人の思惑など意にも介さない、戦争という濁流の中で流されていくだけなのです。