BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

劇場版ウルトラマンルーブ セレクト! 絆のクリスタル 感想

 恒例、ウルトラシリーズ終了後の劇場版。今回はルーブということで、早速見てまいりました。例によってネタバレを含みますので、未見の方はご注意を。

 

 ルーゴサイトとの戦いから1年。綾香市に平和な時が流れる中、イサミにはアメリカの大学への留学の話が持ち上がり、アサヒも看護師を目指して勉強に励んでいた。そんな中、一人自分の夢を見つけられずにいたカツミは、ふと高校時代の友人だった戸井のことを思い出し、彼の家を訪ねるが、ゲームクリエイターになる夢を抱いていた彼は挫折してひきこもりになっていた。そんな時、戸井のパソコンのモニターの中から、「トレギア」と名乗る何者かが親しげに声をかけてきて・・・。

 

 ルーブのテーマである家族の絆を前面に押し出したルーブらしい劇場版。特に、親が親だけにまともな家族関係を築くことのできなかったリクとの絡ませ方が上手いですね。親が悪のウルトラマンだったことを語るリクに対して、血のつながりのない自分を家族として変わらずに受け入れてくれたことを語り、大切なのはどれだけ互いを思い合えるかと説くアサヒとか、家族の絆を得られなかったがゆえにその絆の強さを信じ、簡単に諦めるなと湊兄妹を叱咤するリクとか、見事にルーブとジードの設定をリンクさせていましたね。

 

 今回はアサヒもついに変身。ウルトラウーマンべス以来となるウルトラウーマンの名を冠する戦士、ウルトラウーマングリージョ。ツルちゃんの本名を使うのが彼女らしいですが、戦闘では戦うよりもカラータイマーの点滅している仲間にエネルギーを与えて回復させたり(飴玉を放り投げるようなアクションがこれまたアサヒらしい)、バリアを張って仲間を守ったり、仲間のサポートに特化した活躍を見せました。ウルトラの母が見たら逸材として是非銀十字軍にとスカウトがかかりそうです。

 

 一方、悪のウルトラマンとして登場するのがウルトラマントレギア。自分は人の願いを叶えているだけと言いながら詐欺まがいの方法で陥れ、人の絆の脆さをあざ笑うという、悪のウルトラマンというよりは初代メフィラス星人から紳士らしさを取り去って陰湿さといやらしさとウザさを足したような奴という印象を受けました。その気質に加えてパソコンのモニターの中から親しげに声をかけてくるところが、ついこのあいだグリッドマンにぶっ飛ばされたアイツにそっくりなのも癪に障りますね。円谷としてはこいつをベリアルの後釜に据えるつもりなのかもしれませんけど、力こそ全てというある意味気持ちのいい正統派のヒールだったベリアルに比べて、ねちっこくて見ていて不快でしかないこいつを今後も出し続けるのは個人的にはどうかと思いますが・・・。

 

 あと、これは世間に汚れてしまった大人のひねた意見かもしれませんけど、夢がないこと、叶えられないことをダメとまでではないもの相対的にマイナスなこととして殊更描く必要はないと思います。夢がなくても人は幸せに生きられるのだから、無理に夢を持つ必要も、夢は必ず叶えなければならないという必要もないという選択肢を提示してもよいのではということを見ていて思いました。まぁそれは、「夢は叶えない限り解けない呪いである」と夢の恐ろしさを示したファイズのように、ウルトラマンではなく仮面ライダーでやるべきことかもしれませんが。