BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ウルトラマンタイガ 最終回感想

 ついにやってきた最終回。いやぁ、どうなることかと思いましたが、予想もしていなかった展開の連続でこちらの想像を超えていって、よくぞ30分でここまでまとめてくれたと感心しました。ウーラーを倒すのではなく救う方向へ持っていくとは思っていませんでしたし、それを通じてヴィランギルドが加勢してくれたり対立していた地球人と宇宙人の間に和解の目が芽生えたりする展開になっていくとは。そして、最大の注目点だったトレギアとの決着。結果的にとはいえトレギアの力も借りてウーラーを救い、どれほど否定しようともお前はウルトラマンなんだという事実をトレギアに突きつけるとは、これまた予想もしていませんでした。心情的にはもっと完膚なきまでにこてんぱんに叩きのめしてほしかったのですけれど、お前は結局ウルトラマンだと言われるのはトレギアにとっては友も故郷も捨ててやってきたこれまでの人生を否定されるようなものでしょうから、どんな攻撃よりもあいつの心にグサリと突き刺さったと思えば、納得がいく程度には溜飲が下がりましたね。それにしてもトレギア、最終回に至ってなおやることが、人間の身勝手さを笑うことだとは。そんなもの、神様でもウルトラマンでもない我々がそんな清廉潔白なわけがないんですから当たり前のこと。わざわざお前に言われなくても百も承知で、いまさらそんな当たり前のことを得意げに指摘して勝手に悦に入っている自分の方がお笑いだということを理解してないんでしょうか。そんなだから実質7歳のピリカにも簡単に論破されるんですよ。

 

 さて、めでたく最終回を終えたところでシリーズ全体の総評を。最終回こそこちらの予想を上回る出来でしたが、そこに至る全体を振り返ると、決してよかったとは言えませんね。最大の原因はもちろんトレギア。ことあるごとに現れては話を後味悪いものに変えてしまうあいつのせいで、シリーズ全体がスカッとしない印象になってしまったことは否定できないでしょう。確かにウルトラシリーズは単純な勧善懲悪ではなく、後味の悪い話もあってこそここまで魅力あるものになりましたが、そういう話は時々あるからよいのであって、メインとなるべきものではないでしょう。同じような理由で不人気だったネクサスのように、後年再評価されることもあるかもしれませんが、今のところはそれを評価する気にはなれません。これが劇場版ルーブの頃のように、トレギアの正体も目的も不明のままだったらまた違っていたかもしれませんが、番組が始まる前からあいつの正体がタロウの元親友だということを明らかにしてしまったのはさらなる失敗でした。おかげで我々はあいつのことを「元親友は順調にエリート街道を進んでいて既に大きな息子もいるというのに、理由はよくわからないけど未だに無職のままあちこちをふらついてはいろんな世界の人に迷惑をかけて楽しんでいるまるでダメなオッサン」としか思えなくなったのですから。こんなどうしようもない奴がどんなに悪いことをしたところで、ただヘイトが溜まるだけで悪役としての魅力も何もあったもんじゃありません。さらに話が進むごとにあいつが底の浅さを露呈するばかりなのが拍車をかけ、最終的には痛々しささえ感じてしまいました。

 一方、ヒーローであるところのタイガの方も、どうにも魅力がイマイチでした。よく聞かれる「タロウの息子という設定に意味が感じられない」という意見については、最初セブンの息子として登場したゼロが、今やその肩書を抜きにしてウルトラマンゼロという一人のウルトラマンとしての人気を確立していることを考えれば、タイガもまだまだこれからがあると擁護できるでしょう。ただ、未熟なウルトラマンの成長譚としての物語という観点から見れば、同じテーマを丹念に扱って、生まれたばかりのウルトラマンウルトラの父やキングにも認められるほどに成長するまでを納得のいくかたちで描いたジードには及ぶべくもありませんでした。タイタスやフーマの出番もとらざるを得ず、加えてどちらの個性もタイガより強烈だったことも、タイガにとっては不利に働きました。パワーアップはするけれど、精神的な成長は目に見えて大きくはない。ウルトラマンに限らずヒーローの精神的な成長に重きを置く近年の特撮ヒーロー番組において、それは非常にマイナスだったと思います。

 

 このように、私の中でのタイガの評価は決して良いものではありません。ただ、これはギンガから早6年、平成-令和ライダー同様に長期にわたるシリーズとして、その義務ともいえる新たな方向性を探る試行錯誤の結果であり、これからもニュージェネレーションシリーズを続けていくためには必要不可欠なものでしょう。タイガにとってもこれは一つの区切りに過ぎず、彼の活躍はこれからも描かれていくでしょうし、その中でこれまでの評価を覆していくこともできるはずです。彼がゼロのようになれるかどうかはまだわかりませんが、まずは、次の劇場版を待つとしましょう。