BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ウルトラマンZ 第12話感想

 10年前に地球に落下し、それ以降眠り続け地球防衛軍の研究材料になっていた怪獣、グルジオライデンが突如目覚め暴れ始めた。前回生まれた心の傷によるハルキの動揺からゼットが精彩を欠く一方、ついにキングジョーストレイジカスタムがその真価を発揮する…!

 

 予想はしていましたが、やはり今回もハルキが心の傷を乗り越えるには至りませんでしたね。ヨーコの方は現状人類と怪獣が共存できる状況でもないことも、そのうえで自分たちには「命を奪う責任」があることも、しっかりと覚悟したうえで戦うという覚悟ができているのですが、ハルキは父と先日のレッドキングの親子を重ねてしまって、そこまで現実的に人間と怪獣とのあいだに線引きをして割り切ることがどうしてもできないようですね。まぁウルトラマンと一心同体になる人間というのはそういう人間でなければならないし、コスモスやXの世界なら彼もここまで悩むことはなかったのでしょうけれど。こういうときこそゼットが相棒として寄り添ってほしいところなんですけど、あの異空間に入らないとろくに会話もできないという例の仕様がここでも問題になってきますね。

 

 一方、ハルキがそんな調子なので満足に戦えないゼットに代わり活躍したのがキングジョーストレイジカスタム。改造によってそれぞれに攻撃力が特化された各パーツを生かした分離状態での連携攻撃、さらにはグルジオライデンの砲撃を分離でかわし、ペダニウム粒子砲のゼロ距離射撃によってグルジオライデンを撃破する大活躍を見せました。ただ、その様は華々しい勝利として手放しで喜ぶというよりも、やはり人類には過ぎた力なのではないかという危惧を抱かせるものでしたね。一方で、そんなキングジョーの成果を目の当たりにして人知れず意味ありげにほくそ笑むヘビクラ隊長、いや、ジャグラー。この笑みを目にしてふと思ったのが、もしかするとこれが彼の目的なのではないか、という考えでした。人類にウルトラマンに頼らなくとも自らの手で自らを守る力を持たせる。それは平和を守ることのみならず、同時にウルトラマンの存在価値の否定をも意味する。かつてウルトラマンに選ばれず、理想よりも現実主義的な解決をとるやり方をウルトラマンに否定されたジャグラーにとっては、かつてのようにウルトラマンと戦って勝とうとするよりも、それこそがより魅力的なウルトラマンへの復讐になるのではないか…。これが本当にジャグラーの目的だとしたら、奇しくも歴代ウルトラシリーズで繰り返し訴えられてきた「地球の平和は地球人自らの手で勝ち取ってこそ意味がある」という思想が、かたちを変えてウルトラマンの前に立ちはだかる、というこれまでにない展開になります。現段階ではまだ皮算用にすぎませんが、それに対してハルキは、ゼットは、どう立ち向かいどう答えを出していくのか。一層この先の展開への興味が止まりません。