BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

魔進戦隊キラメイジャー エピソード26 感想

 ヨドンナによって強化されたべチャットによって大苦戦に陥るキラメイジャー。あわや敗北かというそのとき、副作用を迎えたべチャットたちが自滅したことで危うく難を逃れることに。トドメを刺さないと後悔することになるぞとあえて自分からヨドンナの迂闊さを指摘しつつ、必ず大逆転勝利を決めて見せると啖呵を切る為朝。仲間たちへの、何より自らが認めたリーダーである充瑠に対する絶対の信頼を窺うことができ、とてもかっこよかったです。

 

 一方、カナエマストーン・エネルギアを取り込んで大幅にパワーアップしたモンストーンにこちらも大苦戦していた宝路でしたが、こちらもエネルギアの力に耐えきれず変調を来したところを突いて辛くも勝利し、エネルギアも無事回収。為朝はこれを使ってパワーアップすることを提案するも、どれほどの危険を伴うかわからないパワーアップに反対する充瑠。思い悩んだまま再び足を向けた充瑠は、そこでヌシカンさんからかつて神社を訪れた宇宙人…オラディン王の弓勝負の話を聞くことに。いやはや、ほんとにオラディン王はキラメイジャーがピンチに陥るたびに有形無形のかたちで助けてくれますね。ふわっとしたアドバイスしかくれなかった時もありましたけど。

 

 それはさておき、その話から「限界は超えないためにある」という教訓を学んだ充瑠。ピンチに陥るたび「限界は超えるためにある」と叫びながらパワーアップしてそれを乗り越えてきたリュウソウジャーの次の戦隊が、全く真逆のことを掲げるとは誰が予想できたでしょうか。しかし、戦隊が一つ代替わりするだけの短い時間の間に、世界は大きく変わりました。そこで我々が目の当たりにしたのは、爆発的に増殖した新型コロナウィルス患者への対応のため、まさに限界を超えた戦いを強いられ、疲弊していった医療従事者たちの姿でした。現実の世界で限界を超えるということがどういうことになるのか、世界中の人が目の当たりにしてしまった以上、もはや限界を超えることは無条件に肯定されるものではなくなりました。そこで、限界を超えるのではなく、限界を超えない範囲で頑張り、仲間同士で協力し合い困難を乗り越えていくという在り方を提示するのは、まさにポストコロナ時代においてヒーロー番組に求められたことだったのではないでしょうか。番組自体コロナの影響を受けながらも、そこからこのような方向性を導き出すことができたとは、驚嘆すべきというほかありません。

 

 オラディン王の話からひらめきを得た充瑠は、それをもとにキラフルゴーアローを生み出し、100秒間だけパワーアップする力を得たキラメイジャーは、ヨドンヘイムと地球を結ぶ巨大トンネルの開通を目論むヨドンナとバクダン邪面に挑戦。見事な連携攻撃で5体のバクダン邪面を仕留めていくが、最後の一体を残したところで時間切れ…となるも、待ち受けていた宝路が見事にそれをカバーして勝利を収めることに。この展開も、効率性のみを追及するヨドンナに対し、計画が予定通りに行かなかった場合を想定して意図的に用意された余裕…つまり「遊び」として配置されていた宝路がフェイルセーフとしての役割を果たす、というものであり、過度に効率性が求められた結果コロナによってその問題が浮き彫りになった新自由主義的思想を見直そうという、これまたコロナ後に生まれてきた動きを象徴しているように見えました。ヒーロー番組は時代を映す鏡ですが、それをここまで示したこの回は、スーパー戦隊の歴史において記念すべきものになると思います。