BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

仮面ライダーセイバー 最終章 感想

 ストリウスによって大穴に叩き落された飛羽真。しかし、プリミティブドラゴンのワンダーライドブックがそれを助ける。かつて飛羽真によって助けられたプリミティブドラゴンが、今度は飛羽真を助ける側に回るとは、最終回でこんな展開を見られるとは思ってなかったので驚きましたね。そこへルナ、倫太郎、賢人も到着。飛羽真の新しい物語が聞きたいというルナの願いを叶えることを約束した飛羽真の言葉を聞き届けると、彼女と聖剣たちによって、新たなワンダーライドブック、ワンダーオールマイティが誕生。すべての聖剣、ワンダーライドブック、そして剣士たちの思いの詰まったワンダーオールマイティの力の前に、ついにストリウスは倒され、消滅していく。ストリウスはこの結果を予期できていなかったようですが、もしかして彼は「詩人」であるがゆえに、「小説家」が時に体験する「登場人物が勝手に動き出して作者が想定していたのとは異なる物語を紡ぎ出す」という現象を知らなかったのではないでしょうか。

 

 しかし、ストリウスを倒しても、それと全知全能の書に記された終末とは無関係なものであり、無情にも世界は消滅していく。そんな中、芽依が世界に向けて「あなたの物語が世界を救う」と発信。それに応えた人々がそれぞれの「忘れられない物語」について語る笑顔に、暗闇の世界で感謝する飛羽真。一年後、現実世界から姿を消していた飛羽真は、ワンダーワールドで新たな物語を書き終えた。そしてそれとともにワンダーライドブックが力を取り戻し、消滅していたユーリも復活。消えていた人々ともに飛羽真も仲間たちの元へと帰り、その様子をワンダーワールドからルナたちが優しく見守るのだった…。

 

 さて、一年間見てきたうえでの総括ですが、最終盤になってストリウスが創作に絶望した創作者であることが明らかになってからの、物語の力を信じる者VS物語の力を否定する者、という対立構造が出来上がっての巻き返しは、想像していたよりもずっと筋が通っていてきれいに終わる流れでしたね。ただ、全体を振り返ってみるとやっぱり「これは3クール、下手をすると2クールでも十分だったんじゃないか?」という思いはどうしても否めません。序盤から怒涛の勢いで新たな登場人物が次々と登場し、それぞれの人物描写を十分に積み重ねる暇もなく異常なスピードで物語が進んでいったかと思えば、後になってからそこまで急いで物語を展開させる必要があるほどの出来事が待っていたわけでもなく、ノーザンベースが介入してからの内輪もめやマスターロゴスの行き当たりばったりな暴挙などがグダグダと展開していっているうちに、いつのまにやら終盤になっていた、というのが私の中での印象です。まぁあれだけ登場した剣士たちが最終的には全員味方側として決戦に参加し、なおかつそれぞれに必要な役割を果たしていたのはすごいことなんですが、最終回を迎えて振り返って「あそこが山場だった」「あの話がすごかった」と思えるところがこれほどまでにほとんどないライダーって、クウガからライダーを見てきてほとんど初めてなんですよね。思うに、人工知能といういくらでも切り口のある題材を取り上げたばかりに、1年という時間があっても結局は「人工知能は人間の悪意をどう克服するか」という切り口に絞る形でしか描けなかったゼロワンとは対照的に、「物語の力が世界を救う」というセイバーのテーマにとって一年という時間は単純にあまりにも長すぎたのではないか、というのが私の中での印象です。最終回でキレイに終わったことが示す通り、題材として魅力的だったことは間違いないのですが…。