BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ ドン19話 感想

 とあるバス停近くにある電話ボックスを撤去しようとした作業員たちが、突如現れたヒトツ鬼に襲われる。ドンブラザーズが応戦するが、実体が存在しないヒトツ鬼に攻撃は通じず、作業員たちが逃げていくとともにヒトツ鬼も姿を消した。戦闘後、はるかは件の電話ボックスの中にいた女性に声をかけるが、なんと彼女は50年前から好きな人からの電話がかかってくるのを電話ボックスで待ち続けている幽霊だった…。

 

 夏到来ということで早くも幽霊話を、ということなのかは知りませんが、当然この番組のこと、普通に怖い幽霊話などやるはずもなく。そもそも幽霊自体が幽霊なのにやたら明るくて元気だしおにぎりを食いまくったりするし、はるかだけにしか見えないかと思いきや、見えてない人でも息を止めてる間だけは見えるとか謎の設定はあるし。

 

 しかしいつもどおり前半は頭のおかしな展開の連続でしたけど、後半は同じ人が書いてるとは思えないぐらい、恋愛ドラマとしてしっかりしてましたね。前回の予告の時点で、なぜゲストキャラに声優の井上和彦さんが出るのか理由がわかりませんでしたが、一度も彼に会ったことのないまま50年が過ぎてしまった彼女にショックを与えないため、電話を通じて声だけで話をする、という役どころなら、それは声の演技のプロ、それもベテランを使う以外の選択肢はないなと、納得しきりでした。今回の物語は、「始まる前に終わってしまった恋を、始まる前の美しさのままで美しく終わらせる」という恋愛ドラマのテーマとして非常に特殊で高度なものであり、それをこんなにしっかりと、美しく描いて見せる手腕は、さすが特撮ヒーロードラマで誰よりも男女の愛を描いてきた脚本家・井上敏樹だなと改めて思いました。男女が互いに心を通わせて幸福な結末を迎えるというのは、悲劇的な結末を迎える男女の関係が圧倒的に多いこの人の作風からしても、とても珍しいものでしたね。