怪獣災害だけでなく、近頃星元市では物価高と物不足で臨時休業するお店が続出して経済危機。その原因は星元市で流通している地域通貨にして電子マネーである「ホシペイ」の循環が止まってしまっていることであり、それを引き起こしていたのは…。
怪獣災害だけでなく経済危機にまで見舞われるとは、とことんついていませんね星元市は。SKIP分所にも本部から節約のお達しがあり、中でもその煽りを受けていたのが石堂さん。曰く、一日にコーヒー3杯までなどあり得ないと…普段は毎日どれだけのカフェインを摂取しているのか心配になりますねこの人。そこでただ節約するだけではなく、ホシペイに実装されている投げ銭システムを利用し、ユウマも強引に巻き込んで動画配信者となって投げ銭を稼ごうと躍起になるものの、視聴者数も投げ銭も全く稼げず。見た目はどう見ても理知的なイケメンがコーヒー一つでここまで必死になるの、ほんとにおもしろいですね。そこで人気配信者を参考にしようとしたところ、今のトップ配信者は人間ではなくなんと怪獣であることが判明。平べったい頭にがま口のような大きな口、カタツムリのように突き出した目…そう、カネゴンです。
近年のウルトラシリーズではウルトラQの怪獣の登場が相次いできましたが、このたびはカネゴンの登場となりました。正確には「インターネット・カネゴン」。お金を食べることで有名なこの怪獣ですが、1966年の初登場での紙幣・硬貨に始まり、1996年のウルトラマンゼアスに登場したデジタルカネゴンはカード払いに対応、そしてついにサイバー空間上で投げ銭を食べるインターネットカネゴンへと、カネゴンという怪獣は現実の世界におけるお金という概念の変化に従って姿を変え続け、とうとうここまできたわけです。ウルトラQのカネゴンはお金に汚い少年が謎の繭に取り込まれて姿を変えたものでしたが、インターネットカネゴンの正体はホシペイの開発者でありその運営会社のCEOである銅金カナオが開発した完全自律型のAI。もとは彼女が大学時代に研究していた「人間の欲望」を解析し、その最も端的なかたちであるお金を集めるために人間のリクエストに忠実に応えるようにプログラムされ、その結果ホシペイのトップ配信者となったものでしたが、問題はカネゴンはAI故にお金を「使う」という概念を持たなかったこと。そんなカネゴンがトップ配信者となって大量の投げ銭が投じられそこに滞留してしまった結果、お金の循環が滞ってしまったというのが、星元市の経済危機の真相でした。現実の世界において問題となって久しい富の不均衡がもたらす問題を、カネゴンを使って子供にもわかりやすいかたちで開設するとは、トンチキな話の内容に反してなかなかためになりますね今回。
要はカネゴンにお金を使うことを教えればよいというわけで、必ずカネゴンが経由するサーバーでカネゴンを捕獲し、必要な学習データを食べさせアップデートする作戦を行うことに。SKIPってこんな仕事まで対応しなきゃならないんですね…。閉じ込められ空腹のあまりカネゴンが暴れたことにより、サーバーが搭載された飛行船があわや墜落しかけたところでユウマがアークに変身して落下を食い止めたことで事なきを得たものの、あろうことかカネゴンは巨大な腕を実体化させてアークをサイバー空間に引きずり込んでしまう(この時の演出がグリッドマンがコンピューターワールドに突入するときのオマージュなのはご愛敬)。なぜか攻撃されるとマリオの敵みたいにコインを出すアークに攻撃を仕掛けてくるカネゴンとの変な戦いが展開される中、電子化されたユピーがサイバー空間に突入して学習データを食わせるものの、「苦い」と吐き出されて失敗。終いには隠されていたホシペイの準備金(財源は星元市)を見つけて貪り食ったカネゴンはアークをはるかに上回る巨体へ巨大化。それに伴う演算リソースの低下でユピーが消滅してしまう中、アークはルーナアーマーを装着。ルーナソーサーに学習データを持たせ(なぜかチャーハンを作るような手つきでしたが)カネゴンの口に投げ込み、その結果カネゴンは今まで溜め込んでいた大量のお金を吐き出しながら元の大きさにまで縮み、これまたウルトラQの原典通りお尻からロケットを噴射して吹っ飛び、なぜか実体化してパラシュート降下で星元市民の前に降り降り立ち、大喜びの彼らの前でご機嫌に踊るのでした。そして相変わらず動画配信を続ける石堂さんとユウマでしたが、カネゴンからの投げ銭を受け取った石堂さんが、なんとカネゴンの姿に…。
近年のウルトラシリーズでのウルトラQ怪獣登場回はいずれも原典へのリスペクトと新たな視点が取り入れられた意欲作でしたが、カネゴンもまたその例に漏れないものでしたね。もともとウルトラQでの原典が、あんまりお金に汚すぎるとカネゴンになってしまうぞという寓話的なものでしたが、そこから時代が進んだ結果の「お金」の概念の変化と、現実に起こっている富の不均衡の問題をわかりやすいかたちで取り入れるとは。やはりウルトラQ怪獣の登場回にハズレなしです。