BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ウルトラマンアーク 第9話 感想

 防衛隊と協力し透明怪獣ネロンガの撃滅に成功したSKIP星元市分所。そこに本部から怪獣分析班所属の山神サトルがやってくる。山神はかつて大学で怪獣学の教鞭をとっており、当時高校生だったリンも放課後に彼の講義に潜り込んでいた。久しぶりの再会に喜ぶ2人だったが、実はリンは山神が関与を疑われているある秘密の捜査に協力していた…。

 

 冒頭描かれるSKIPと防衛隊合同によるネロンガの撃滅作戦。ここ数年のシリーズでの登場回数も多くシン・ウルトラマンにも登場し、以前と比べて格段にネロンガ知名度も上がっていると思いますが、ユーを囮に使って送電線まで誘導され、例によって電気を喰い始めたところで送電線に高圧電流を通電。ネロンガの体内の蓄電器官の許容量をオーバーする電流を流し込むことで過充電を起こし倒す、という作戦が見事に成功。アークが登場するようになってからも出現する全ての怪獣をアークが倒しているわけではなく、こうして人間の力だけで倒すことがこの世界での本来の怪獣対策の在り方であるということがよくわかるシーンですね。同時に、怪獣は火器による攻撃での殲滅が難しいため、その生態を利用した対策を取ることが有効であり、そのためにSKIPのような怪獣の生態の知識に精通したプロフェッショナル集団が必要なのだということもよくわかります。ネロンガ撃退成功後に山神の口からネロンガ、パゴス、ガボラ、マグラーは共通の祖先から進化したという説が語られましたが、これはこの4つの怪獣は全て東宝怪獣であるバラゴンの着ぐるみの改造を繰り返して作られたという事実が元ネタ。ファンの間ではバラゴンからこれらの怪獣が派生進化した、という説は二次創作的に語られてきましたが、バラゴンの名前こそ出せないもののそれがついに公式となった、ということですね。

 

 海外の富裕層に怪獣の細胞が横流しされているという事件が発生しており、防衛隊の調査により山神の関与が疑われていることが判明。その証拠をつかむべく、山神と旧知の仲であるリンがその捜査に参加する、というお話。山神を罠に嵌めて動かぬ証拠をつかんだリンでしたが、そこで実は仮死状態になっていただけだったネロンガが蘇生して活動を再開。さらに地中からパゴスが出現。先のネロンガ出現もパゴスによって地中から追いやられた結果だったらしく、2体の怪獣は地上を舞台に戦闘を再開。同じ着ぐるみの改造ゆえにかつては決して実現しえなかった怪獣同士の夢の初対決がここに実現したわけで、そのへんの歴史を知っているファンにとっては大喜びですね。この怪獣同士の戦いに割って入るかたちでアークが登場。夕焼けの街で戦う2大怪獣相手に戦いを挑むウルトラマン、というと、どうしても「帰ってきたウルトラマン」の名エピソード「2大怪獣東京を襲撃」を彷彿とさせますね。劣勢に立たされたアークでしたが、ソリスアーマーを纏ってネロンガの電撃とパゴスの分子構造破壊光線を防御。うまく2体をクリンチさせたところで上空から必殺技を見舞い、まとめて撃破したのでした。

 

 山神が怪獣の細胞を横流ししていたのには、怪獣の撃退を優先するばかりでその生態を研究し利用しようとしない現状への憤りが理由だったようですが、「ゴジラ」の山根博士と同じ誤謬に陥っていましたね。未来のことを考えるのは大事ですが、現在のことをおろそかにしては未来もないのですから…。