アマチュア無線愛好家である青年、カズオ。鬱屈した日常を送る彼にとって唯一の楽しみは、「フィオ」と名乗る顔も知らぬ人物との交信のひと時だった。だが、フィオにはある重大な秘密が存在し、さらにその交信の電波に引き寄せられ、宇宙からノイズラーがやってきてしまう…。
映画、TV、そして動画配信サービス。様々な映像メディアが氾濫する現代において、声のみで見知らぬ相手と交信するアマチュア無線。メディアとしては古風でありながらも、声だけで顔も知らぬ見知らぬ相手と繋がれるというその特性は、昔から様々な映画やドラマで運命的な出会いを演出するための道具として利用されてきましたが、とうとうウルトラシリーズでもそれが効果的に使われる話が描かれましたか。地球人ですらない別の星の住人と無線がつながってしまうというのは、まさにウルトラシリーズらしい展開でしたが。孤独な青年と宇宙人との交流というと、ウルトラセブンの「円盤が来た」を思い出しますが、あちらが実相寺監督作品らしいドライなオチだったのに対し、今回の話は最後まで美しい抒情的な物語として完成されていました。やはりウルトラシリーズはどの作品にもこういう話が欲しいですよね。細かいところで言うと、かつての同級生だったカズオのことを、特におしゃべりが上手というわけでもないのに気にかけようとするユウマも彼らしかったですね。
今回の怪獣は、結構前にクラウドファンディングによって着ぐるみが新造されながらも、映像作品ではなぜかチョイ役的な扱いでしか出てこなかったノイズラー。80での初登場以来、満を持してのメイン怪獣としての出番です。音波のみならず電波も捕食するようになっており、カズオとフィオの交信電波が好みの波長だったらしく、宇宙から地球へと降りてカズオの家に迫る、という役どころ。カズオとフィオが最後の交信をしているところにあくまで食事目的でやってくるという、野暮と言えば野暮な役回りなのがちょっと気の毒ですが。それなりにアークを苦戦させたものの、音に敏感な性質と相変わらずカラータイマーの音が苦手というウルトラ怪獣として致命的な弱点を逆手に取られ、最後はうまいことアークに誘導され宇宙に帰っていきました。これまた80やギャラクシーファイトの時と同じく、ノイズラーはウルトラマンに倒されることなく宇宙に返されるというパターンが多いですね。