コウセイが送り忘れた荷物を届けるため、一人で田舎町へ出かけるソラト。届け先でソラトは母を失くして叔母のもとで暮らす少女・ミコと出会うが、ミコにはある秘密があり…。
ウルトラシリーズでは地域の民話や伝説に名を残す怪獣が現代に蘇る、という類の話が定番の一つとしてあり、最近ではブレーザーのドルゴやアークのリオドなんかがそうですが、怪獣が初めて人類の前に現れたという設定のオメガではそういう話はないかな…と思っていたら、ちゃんとありましたね。しかも過去のウルトラシリーズでもめったに見られない、操演で動かすタイプの大蛇の怪獣とは。そうして出てきた今回の怪獣、オオヘビヌシノミコトですが、古来白蛇は神の使い、または神そのものとして日本各地で祀られてきたので、説得力も十分です。面白いのはオオヘビヌシノミコトは鉄を喰うというところ。蛇神というのは日本では普通水の神であることが多く、一方鉄は製鉄に火を使うことから火と結び付けられることが多く、あまり鉄と結びついた蛇神伝説というのは耳にしたことがないのですが。単に金物を食べるだけでなく、人間の血液中の鉄分を吸収し、それによって人間は貧血症状を引き起こす、というのも面白いですね。日本では昔から山中で突如すさまじい空腹感に襲われ歩けなくなる現象のことを「餓鬼憑き」とか「ひだる神」といった妖怪の仕業としてきましたが、これは食事をとらないまま山道を歩いた結果極端な低血糖状態に陥ったことを指すのではないか、という説がありますが、同じように神様や妖怪に精気を吸われた、という話をこのように科学的な解釈で見せてきたところが面白いです。鉄分の吸収はオオヘビヌシノミコト自身にも制御できない不随意運動みたいなもののようですが、もしかすると昔この地域にもっとたくさんの人が住んでいた頃は、オオヘビヌシノミコトは人々から少しずつ鉄分を得ることで害を与えることなく共存していたのかもしれません。それが過疎化によって人口が少なくなり、一人の人間からたくさんの鉄分を吸収せざるを得なくなったことで、オオヘビヌシノミコト自身も望まない今回のような事態となってしまったのかもしれません。こう推測できるのは、6期鬼太郎のすねこすりの話がそういう話だったからですが…。
自身にも制御できない鉄分の吸収によって、ミコを生命の危機にまで追い詰めてしまったオオヘビヌシノミコト。最期は自らオメガによって倒される道を選びましたが、あれは神様として祀られていた怪獣なので、きっといつかまた蘇ると思うんですよね。ウルトラマンの各シリーズに一話はあってほしい、ビターなお話でした。