BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ウルトラマンX 第19話感想

 大地の夢である人間と怪獣の共存に向け、その重要な一歩となるスパークドールズの実体化実験。大地と強い絆を持つゴモラが実験対象に選ばれ、万全の準備を整えたうえで行われた実験は、成功したかに見えたが・・・。

 実験が持つ意味や対象にゴモラが選ばれた理由はよくわかるんですが、やはり時期尚早な実験でしたね。最大の脅威であるダークサンダーエナジーについて、その正体やどこから来るかなどの詳細が何一つわかっていないのに、万全な準備などあるはずもないでしょう。しかし、飼いならされたゴモラというのは見るに堪えませんね。子供の頃、炎も光線も吐かず尻尾ひとつであのウルトラマンをこてんぱんに叩きのめしたゴモラの姿に、私は強く惹かれたものです。誰にも従わない、誰も従わせることができない、荒ぶる自然や野生の象徴みたいなものをゴモラに見たので、大怪獣バトルやXのように人間と仲良くしているゴモラを見ると、私は複雑な気分になるのです。

 暴走するゴモラを止めようとしたエックスは、突如何者かに幽閉される。その正体は、かつて人間によって作り出され、事故によって宇宙に飛ばされた人工生命M1号だった・・・。とある年末特番で某大物芸人にそっくりなことで爆発的に一般知名度を獲得したM1号がまさかの登場。本人が自己紹介した時に流れたのは初登場であるウルトラQの「地底超特急西へ」の映像でしたが、XはQの世界と地続きなのか、それとも同じ事故が起こったのか。怪獣図鑑では知能は三歳児程度と書かれるM1号ですが、侮るなかれ。柳田理科雄氏の「空想非科学大全」によれば、M1号は東京-北九州間を3時間で結ぶ地底超特急いなずま号の中で生まれたので、長く見積もっても生後3時間。つまり生後3時間で三歳児並みの知能をもつM1号は恐るべき知能指数の持ち主なのだ・・・という話でしたが、今回のM1号はその話を証明するかのように、宇宙に放り出されて歳月を重ね、エックスを瞬時に空間転移させフラスコの中に幽閉するほどの恐るべき力を手に入れていました。人間と怪獣との共存を否定し、人間の身勝手さを非難するその語り口も、冷徹なまでに知的なもの。正直、子供をさらって「地球をあげます、と言え」と迫っていたメフィラス星人よりもはるかに恐ろしいです。身を挺してゴモラとの絆を訴えるアスナの姿に心動かされ、エックスを解放して事態の収拾を許したものの、人類の監視を続けていくことを伝えたM1号。かつてと変わらず「私はカモメ」と呟きながら虚空を漂う、その孤独と絶望は深い・・・。