BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

鬼談百景

鬼談百景 (幽BOOKS)

鬼談百景 (幽BOOKS)

 「十二国記」シリーズなどで有名な小野不由美さんによる実話怪談集。発売されたのは夏でしたが、ようやく図書館で借りて読了しました。

 一口に怪談と言ってもいろいろありますが、私はやはりこの本のように長くても4,5ページぐらいの話がたくさん載っているものが一番好きですね。チョコレートの詰め合わせと同じようにいろいろな話を気軽に楽しめますし、短いページでいかに恐怖を感じさせるかというのも怪談の見どころの一つですし。

 この手の実話怪談集はいくつも読んでまいりましたが、これはかなり質のいい話がそろってますね。一番怖いと思ったのは、墓地で鬼ごっこをして遊ぶ子供たちが体験した気味の悪い出来事を書いた「続きをしよう」。幽霊などは全く姿を現さないのですが、最初から最後まで得体のしれない何かに否応なしに動かされているような感覚がたまらなく怖いです。流し雛の風習のある地方で子どもたちが奇怪な山伏と遭遇する「満ちる」も幽霊は出てきませんが、本当の恐怖はまだこの先に待っているのかもしれない、というところで話が終わるのが、小泉八雲の「茶碗の中」にも似た感じがたまりません。実際にこの世ならざる者が姿を現す話としては、学校から帰る雨の田んぼ道での恐怖を描いた「雨女」が印象に残ります。私も小・中・高と通学路がろくに人通りもない農道ばかりだったので、話の中の光景がありありと想像できてゾッとしました。

 この話と同時に長編怪談「残穢」も発売されており、こちらもいずれ読む予定で楽しみです。

残穢

残穢