BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

MM9 -destruction-

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 山本弘氏の怪獣小説「MM9」シリーズもこれで3冊目(番外編の短編集「トワイライト・テールズ」を含めれば4冊目)。以前取り上げた「怪獣文藝」は怪獣をお題にとった怪談集でしたが、こっちは正真正銘、巨大な怪獣同士ががっぷり四つに組みあう純然たる怪獣小説。戦闘シーンの迫力ある描写や膨大な疑似科学的考証に相変わらず酔いしれますが、やはり特撮ファンとしては、ふんだんにちりばめられた怪獣映画やウルトラシリーズのネタにニヤニヤしてしまいます。以下、気づいた元ネタを列挙(私のこじつけや思い込みかもしれないものも含みますが)。

怪獣・宇宙人 元ネタ
ヒメ ウルトラマンモスラ
恒点観測員774号ジェミー ウルトラセブン+ルバーツ星人ゼミ
チルソギーニャ遊星人 チルソニア遊星人
ゴウキング キングジョー
メカモグラ モゲラ+恐竜戦車
ガラコブラ エレキング+ナース?
ギガント タイラント+キングザウルス三世+バキシム
ゴズ ゴジラ
カガミ ガメラ
アギャーラ ギャオスorイリス?

 前作「invasion」は2体しか怪獣が登場しませんでしたが、今回はまさに怪獣総進撃。ゴズが海中から放った熱線がゴウキングを撃墜する画面は、勝手に頭の中にゴジラのテーマが流れていました。他にも、動くときに「ゴワジヴァ、ゴワジヴァ」と音を立てながら動くゴウキング、羽化したヒメが流星キックでギガントの角をへし折る場面などはありありとその様が想像できますね。

 第1作からウルトラマンとしての役割が与えられていた美少女型怪獣・ヒメですが、今回は「蛾の女神」という本質が明らかになったことによって、モスラの属性も新たに獲得。ヒメをモスラ、ゴズをゴジラ、カガミを(無理やり)ラドンに当てはめるなら、この3体の怪獣が宇宙怪獣たちを迎え撃つ構図は「三大怪獣 地球最大の決戦」のオマージュともとれますね。そして今回一番笑ったのが、伊豆野が茨城の海岸に漂着したヒメの卵を買い取った時のことを話すこの会話。

「マスコミに話が流れる前に、急いで買い取った。122万4560円でね」
「えらく半端ですね」
「公正価格だよ」

 ゴジラファンならすぐにピンときますが、「モスラ対ゴジラ」で静之浦に漂着したモスラの卵を見世物目的で買い取った興業社の男と主人公たちの会話そのものです。見事に金額まで一緒。半端な金額なのは、モスラの卵の大きさを鶏の卵15万3820個分と見積もって当時の鶏卵の単価を当てはめた結果でしたが、巨大なモスラの卵と違い、ヒメの卵はサッカーボール大。伊豆野は何をもって「公正価格」としたんでしょうか。

 今回のラストを見る限り、ウルトラマン的な物語はひとまず終わりのようですが、果たして今後の展開はあるんでしょうか。貴重な怪獣小説の命脈、ぜひとも今後も保ってほしいところです。