BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

パシフィック・リム:アップライジング 感想

 オタクの監督がハリウッドの資本を使って巨大ロボットと怪獣のバトルを描き、巨大ロボと怪獣の本場である日本のオタクたちの度肝を抜いた前作から早5年。「パシフィック・リム」待望の続編が公開されたので早速見てまいりました。例によって多少のネタバレを含む感想となりますので、未見の方はご注意ください。

 舞台は前作から10年後。前作のラストで異次元人プリカーサーが怪獣を送りこんでいた太平洋海底の次元の裂け目は閉じられ、人類は「怪獣戦争」の痛手を抱えながらも復興の途上にあった。前作の英雄であるペントコスト司令官の息子・ジェイクは、軍を離れ復興途上の地域で物資の違法転売に手を染めていたが、自力でパーツを集め自らのイェーガーを作っていた孤児の少女アマンダとともに逮捕され、無罪放免と引き換えに軍に復隊しイェーガーのパイロット候補生たちの教官を務めることになるが・・・。

 前作では人類は怪獣の脅威によって滅亡の危機にあり、物語の構造もひたすらに人類対怪獣というシンプルなものでしたが、今回はその危機が去って10年が経ち、表向きは平和を取り戻しつつある一方で、軍に量産型無人イェーガーを売りこもうとする巨大企業が登場したり、いろいろと人間の間でのしがらみが顔を出し始めるのが一味違っていますね。とはいえ、最終的には前作同様人類対怪獣の構造へと持っていくまでの展開には、前作から登場しているキャラを思い切った使い方をすることで意外性を持たせており、なかなか驚かされました。所属不明の謎のイェーガー、オブシディアン・フューリーの登場により、イェーガー対イェーガーの対決が見られるのも新しいところ。また前作では怪獣とのバトルの舞台が嵐の海とか夜の街とか深海の海底とか、ことごとく暗い場所で展開されたせいで怪獣の全体像が把握しづらかったのだけが難点でしたが、今回はどのバトルも真昼間に展開されるためそれも解消されました。前作では主役機であるジプシー・デンジャー以外のイェーガーは個性的であったにも関わらず見せ場がほとんどありませんでしたが、今回は主役機ジプシー・アベンジャー以外のイェーガーにもちゃんと見せ場が用意されているのもいいですね。また、明らかにマジンガーZエヴァンゲリオンなど日本のロボットアニメを意識している要素も見られ、燃える展開の連続で日本のロボットアニメファンにはうれしいものとなっています。

 一方で不満点というか疑問点を挙げるなら、ジェイクをペントコスト司令官の息子とした設定に必然性はあったのか、ということですね。前作でペントコスト司令官やマコの口から彼の存在が全く語られなかったのはまぁ日本のアニメや漫画の続編でもよくあることですからともかくとして、偉大な英雄を父に持つ不良息子としてのコンプレックスを抱えているのかと思ったら、案外そういうものはなく、物語の序盤から親父は親父、俺は俺だと早くから割り切っていたのがちょっと拍子抜けでした。まぁ最終的に、軍人の鑑のようだった父とは違うかたちで、意図せず急きょ実践に投入することになった教え子たちを鼓舞して立派にリーダーとしての務めを果たすことになる意味では必要な設定だったかもしれませんが。また今回の最終決戦の舞台は巨大ロボと怪獣の本場であるこの日本の東京なのですが、この映画の東京には東京タワーや都庁といった東京らしいランドマークが一切なく、街の風景も中国語の看板ばかりで全く東京らしさが感じられないのが、せっかく日本を舞台としているのになぁ・・・と日本人としては残念でした。もしかすると、かねてから問題になっている、海外の映画会社が日本でロケをするのに自治体などが非協力的だという問題がここでもあったのかもしれませんが。あと、前作の主人公であるローリーが、名前だけは何度も登場するけど一切登場しないばかりか今どうしているのかさえ語られないのも、さすがに不自然さは拭えませんでしたね。

 超人気作の続編ゆえに、どうしても前作との比較から手放しではほめられないところもありましたが、前作にはなかった要素や意外な展開、燃える展開をこれでもかと詰め込み、前作とは一味違ったかたちで「パシフィック・リム」の世界観を広げてくれました。ラストを見るとさらなる続編が期待できそうで、今から楽しみです。