BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

今週の仮面ライダーエグゼイド 最終回感想

 ポッピーとパラドの尊い犠牲によりパンデミックは鎮圧され、ゲムデウスは正宗から分離させられた上で消滅した。しかし同時にパラドの消滅により永夢は変身能力を失い、これを好機と正宗はなおも野望に向けて突き進もうとする。果たしてドクターたちは、仮面ライダークロニクルを攻略することができるのか?

 というわけで、ついに訪れた最終回。いやはや、正宗の諦めが悪いのはわかってはいましたが、本当に最後の最後まで往生際悪く永夢たちの前に立ちふさがるとは。ハイパームテキの脅威が去ったのをいいことにポーズの力でライダーたちを圧倒し、永夢に剣を振り下ろそうとするクロノス。そのとき永夢の目が赤く輝き、彼の繰り出したパンチがクロノスのバグヴァイザーを打ち砕く。驚愕するクロノスの前で、他のライダーたちとともにエグゼイドへと変身する永夢。このとき第一話のアバンタイトルと同じ、レーザーに騎乗したエグゼイド、ブレイブ、スナイプのそろい踏みとなるのが心憎い演出ですね。パラドがウィルスを抑制したこともあり、レベル2の力でも連携してクロノスを追いつめていくライダーたち。社長も「時間差コンティニュー」で最後まで視聴者を笑わせることを忘れない。そして最後は、ライダーキック同士の激突により、ついにクロノスは正真正銘の敗北を喫することに。しかし、敗北してなお永夢たちを自ら消滅者たちの復活をふいにした「命の冒涜者」とあざ笑いながら消えていく正宗は、仮面ライダー史に残る見事な悪役ぶりでした。

 仮面ライダークロニクルは攻略され、パンデミックによる患者も元に戻った。貴利矢はゲーム病治療のための新薬開発、飛彩は新しい研修医の指導、大我は飛彩の嘆願とゲーム病治療の功績が認められゲーム病の専門医として正式な認可を受け、高校を卒業したニコはその医療事務の仕事につくことを希望する・・・と、ドクターたちは新たな一歩を踏み出すことに。そして永夢は日向審議官とともに一連の事件の被害を報告する衛生省の記者会見に出席し、消滅者たちは死んだわけではなく復活できない状態にあるだけという見解を発表し、消滅していった人たちの名前を挙げながら、医療の進歩を信じこれからもその治療に取り組んでいくことを宣言する。永夢が挙げた名前の中には正宗の名前もあり、永夢にとっては正宗でさえ救済すべき患者の一人であるということを示すもので、これで正宗は永夢に完敗したなと思いました。医療とは、人間がこの世にいる限り終わらない病との戦い。消滅者たちの復活を安易に番組内で解決はせず、永夢たちドクターが今後取り組んでいくべき課題として残したのは、ドクターたちのドラマとしてとても素晴らしい落としどころでした。一方、仮に消滅者たちの復活を実現したとしても、おそらくそれは黎斗や貴利矢と同じく人間としてではなくバグスターとしての復活。記者会見で記者の一人が「データを命と呼べるのですか?」と疑問を呈したように、バグスターとして復活した者たちを人間として再び社会に受け入れることは、必ず大きな波紋を呼ぶことになるでしょう。その一点だけでもまだまだ話を作れそうなのですから、本当にエグゼイドという作品は懐が深く、まだまだ伸びしろがあると思います。

 そして晴れて研修医を卒業し正規の医師として永夢が患者の治療に当たっていた時、突然ポッピーが復活。彼女が消滅した時に降ってきたデータのかけらを黎斗が培養・復元したということで、本当にこの神は最後の最後までいい仕事をします。そして、ネットで散々ネタにされた「宝生永夢ゥ!!」を再びやりながら、あのとき永夢が変身できたのは、パラドの消滅間際に手を差し伸べた時に再び彼のゲーム病に感染していたためだということを説明する神。そしてパラドも永夢の体内で増殖したことで復活を遂げ、これからもCRのドクターたちはゲーム病の治療のために奔走していくのでした。

 というわけで、今回も一年間最後まで追いかけることができました。最初の頃はあまり面白いとは思いませんでしたが、黎斗がその本性を現し、貴利矢がその罠にかかって死んだあたりから、電王ではありませんがまさに最後まで毎週クライマックス状態。伏線の張り方も巧妙で、特に「仮面ライダークロニクル」という一つのガジェットが、黎斗の歪んだ理想の果ての究極のゲームとして登場し、彼の死後にパラドによってバグスターが人間を攻略するための手段として利用され、さらに突如現れた正宗によって彼の野望のための道具として利用される、というふうに物語上での役割や立ち位置を二転三転させながら常に物語の中心にあったことには舌を巻きました。「医療」と「ゲーム」という一見荒唐無稽な組み合わせを見事に両立させ、不屈の意思をもって患者たちの治療に邁進するドクターたちの姿を描き切った本作は、まぎれもなく仮面ライダー史上に残る大傑作です。このドラマを生みだしてくれた全ての人々に、心からの感謝と拍手を。