- 作者: 久正人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/09/07
- メディア: コミック
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部屋に引きこもってギャルゲーばかりやっている天照大神。眷属の女たちを娼婦として働かせる吸血鬼。モンゴリアンデスワームに乗って手紙を配達して回るグールの配達夫。アメリカ政府の計画によって世界中から護送されてきた神々、英雄、モンスター、UMAなどの異形の存在が隔離された、存在しないはずのアメリカ51番目の州「エリア51」。異形だらけのこの場所で、付喪神となったコルトM1911を片手に人間でありながら探偵業を営む真鯉徳子、通称マッコイの活躍を描く作品の第4巻。
作者の久正人先生のことを知ったのは、前作「ジャバウォッキー」から。黒ベタを多用した黒と白のコントラストが印象的な描き方、ユニークな表現技法、外連味たっぷりのセリフ回し、ぶっ飛んだ設定(ナイチンゲールが実はMI6のスパイで、年老いてなお機械仕掛けの車いすに乗って二挺拳銃をぶっ放すなど)の全てがツボにはまってしまいました。もちろんそれらの魅力は、「エリア51」ではさらなる輝きを放っています。
4巻の収録内容は大きく2つに分かれます。前半は前巻からの続き。自らが追っている「仇」の手掛かりを知るらしき、何の記録も残っていない謎の男を刑務所から脱獄させたマッコイですが、、実はその男は・・・。最初の頃から断片的には描かれているマッコイの過去の全貌がいよいよ明らかになると思っていましたが、残念ながらそれはまだ先のようですね。エリア51に生きる各国の神々の代表「十神会議」の面々すら恐れる男の正体。その名前といい、人をそそのかすところといい、たぶん正体は我々の祖先が居心地のいい引きこもり生活を追い出されるきっかけを作ったアイツなんでしょうけれど。そういえば、世界中の神様が登場するのになぜかキリスト教の天使や悪魔は出てきませんね・・・。
後半は打って変って、再びいつもの探偵業に戻るマッコイ。深い森の中、チェシャ猫やヘンゼルとグレーテル、赤ずきんたちに道を聞きながら彼女がやってきた先では、白雪姫を守る7人の小人たちと城の女王が差し向けた兵士たちが派手にドンパチを繰り広げていた・・・。まさか、おとぎ話の住人達までエリア51に連れてこられていたとは思いませんでした。まぁ、前巻では護送させてきたサンタクロースを脱走させる話がありましたから、そういうのもありなんでしょうけれど。白雪姫を軸に様々なおとぎ話の設定を大胆に絡めながら、最後は切ないラストにまとめる手腕は見事としか言いようがありません。