BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

映画『牙狼<GARO> 〜蒼哭ノ魔竜〜』感想

http://garo-project.jp/SOUKOKU/

 いつも通り公開初日に観に行ってまいりました。チケットを買ったら、ガロのイラストが描かれたカードをもらいました。ガンバライド? ダイスオー? いいえ、ヴァンガードでした。

 TV第2シリーズの終盤、シグマの企みを阻止するため謎の存在・ガジャリと契約した鋼牙。その契約を果たすため、ガジャリの体の一部である「嘆きの牙」を求めて「約束の地」へと旅立った彼の、その後の物語。

 もともと英雄譚の王道を行く牙狼ですが、今回の物語はさらにそのど真ん中を狙ったファンタジーの王道中の王道。重要なアイテムを失った主人公が、アイテムを取り戻しながら仲間と共に旅を続け、強大な敵を打ち倒して秘宝を手に入れ、世界を救う。見事なまでにファンタジーRPGの筋書きをなぞる流れですが、キャストの熱演と次から次へと映し出されていく「約束の地」の映像美に圧倒され続け、2時間近い上映時間があっという間に過ぎ去りました。ほとんど全ての場面の背景がCGで、役者さんはほとんどブルーバックでの撮影だったんだろうなぁとその苦労に思いをはせつつ、雨宮監督のイマジネーションが爆発した映像と比較して、自分の想像力の乏しさを嘆く。牙狼にしては珍しくエロもグロもないのも特徴ですね。

 「約束の地」はヒトによって思われ、形となり、愛され、そして忘れ去られた「モノ」たちが住まう世界。登場するモノたちは人間そっくりだったり妖怪みたいな姿をしていますが、付喪神のようなものでその正体は我々の世界にあるもの。映画のラストで誰かがそのモノを思い出す(捨てられていたのを拾う、長い間しまわれていたのが出てくるなど)ことによってモノたちは本来の姿を取り戻し、人間の世界へと還っていくのですが、カカシの正体が明らかになる場面は思わず目が潤みました(メルの正体は驚きつつも納得しましたが、あれは「モノ」なんでしょうか・・・)。震災以来語られる「絆」の大切さはゴーバスターズのようにヒーロー作品の世界にも及んでいますが、ヒトとヒトとの絆だけでなく、ヒトとモノの絆に焦点を当てた物語は見事だと思いました。

 牙狼といえばTV第1シリーズの翼人牙狼、「白夜の魔獣」の鷹麟牙狼、「RED REQUIEM」の竜陣牙狼と、登場してきた様々な牙狼の強化形態ですが・・・今回は牙狼が、というより、轟天がえらいことになってます。具体的には、東宝特撮的な意味でその名に恥じぬ姿に。一方、零、翼、レオの3人はサバック(小説「妖赤の罠」に登場した魔戒騎士の武術大会)に参加しながら鋼牙の帰りを待つかたちで冒頭とラストのみ登場。尺の都合もあり彼らの戦う姿は描かれませんが、いつかサバックも映像化してほしいものです。零の構え(両手剣をクルクルと回して逆手で構える)はいつ見てもかっこいいなぁ。

 唯一残念なところをあげるとするなら、カオルが回想シーンにしか登場しないことですね。今まで鋼牙の戦いを見てきた者としては、やはり最後はカオルとゴンザのところへ鋼牙が帰ってくるのを見て安心したかったのが正直なところでしたが。まぁ、彼がカオルとの約束を違えることはないので、監督もあえて描かなかったのかもしれません。

 さて、既に伝えられているように鋼牙を主人公とした牙狼の物語は今回で最後となります。そう聞いていたのでどんな作品になるのかハラハラしていましたが、ふたを開けてみれば肩の力を抜いて楽しめる映画でした。外伝を除けばこれまでは牙狼=冴島鋼牙の物語だっただけに、既に製作が発表されている新シリーズがどうなるかが期待と不安が入り混じっておりますが、最後まで「守りし者」としての姿と覚悟を見せてくれた鋼牙に拍手を。そして、いつかまたその姿を見ることができる日を、楽しみに待っております。