BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

残穢 住んではいけない部屋 感想

zang-e.jp - このウェブサイトは販売用です! - 映画 アニメ動画 ドラマ動画 映画動画 海外ドラマ リソースおよび情報

 基本的に映画といえばヒーローものかアニメかSFばかりでそれ以外のジャンルを映画館で見ることはほとんどない私ですが、今回はその非常に珍しい例外。以前このブログでも感想を書いた小野不由美氏の「残穢」が映画化されたので、このたび見てまいりました。三度の飯より怪談が好きな私ですが、ホラー映画は大の苦手。理由はもちろん怪談好きであると同時にものすごく怖がりだから。そんな私でも映画館へ足を運ぶ気になったのは、この作品には貞子や伽椰子のようにとんでもなく怖い幽霊は出てこないことは既に小説を読んでわかっているためでしたが、果たして・・・。

 小説なりマンガなり、テキストや絵による原作が先にある作品が映画化された場合、楽しみでもあり不安にもなるのが、どの程度原作を再現しているか、あるいはうまく独自に解釈しているかということですが、その点に関して言えばこの映画はかなり成功していると思います。大きな変更点といえば、小説家の「私」のもとに発端となる怪異を伝え、ともにその起源を追っていく「久保さん」が原作では30代の編集者だったのが大学生に変更されていることぐらい。久保さん役に橋本愛さんをキャスティングしたことによる変更でしょうか。他にも発端となった久保さんの部屋での怪異が2012年と最近に変更されたり、原作では複数の家族に起こった別々の怪異が一つの家族に集約されたりしていましたが、原作で数年にわたって行っているたくさんの人への聞き取りを2時間の映画に収めるには必要なことでしょう。実際に話の流れ自体は忠実に再現されています。「私」の書斎に置かれている人体模型まで忠実に再現されていました。

 さて、リングや呪怨に比べればそんなに怖いものは出てこないから大丈夫だろう・・・と見に行った私ですが、結局思い知ったのは、「読むと見るとは全く違う」ということでした。なるほど、この作品に出てくるのは天井から首を吊ってぶら下がっている女とか、床を這いずり回る真っ黒な人の形をしたものとか、床下から聞こえてくる呪詛の声とか、怪談を愛好していれば似たような話を何度も読んでいて、あまり怖いと思えなくなっている話。しかし、そんな手あかのついた話でも実際ビジュアルとして目の前に現れればやっぱり怖いのだということを、改めて実感させられました。まぁ、そこで観客を怖がらせることができなければホラー映画とは言えないのですが。

 ただ、内容を凝縮したために弊害が出ているところもないわけではありません。原作では同じ地域に住んでいても怪異が発生している家族と発生していない家族があることが繰り返し描かれて、ロシアンルーレットのように当たり外れがあることの恐怖を感じたのですが、この映画でももちろん「外れ」の家族も描かれているものの、「当たり」の家族のインパクトが強いせいか、その「当たり外れがあるということの恐怖」はあまり感じられませんでした。また、「私」による「穢れ」の説明もあっさりしていて、原作での肝である人から人へ穢れが伝染していくことによる怪異の拡大の恐怖が、原作のように明日にもわが身に起きるかもしれないものとしては感じされませんでした。

 原作の通り、「私」たちは怪異の震源地である北九州の廃屋を訪れ、ルーツとなったものを確認したことでこれ以上の追及はやめようと久保さんが決めたことで調査は終わり。ここで映画も終わりにしておけばどれほどよかったか・・・。残念なことに、特撮ファン向けに例えるなら「仮面ライダー THE NEXT」のラストと同じことをやってしまっているのです。いわゆる「恐怖はまだ終わっていなかった」というやつ。しかもそれを何パターンもやる。このために最後の最後でものすごくありがちなホラー映画になってしまい、怖がるどころか白けてしまいました。惜しい。

残穢(ざんえ) (新潮文庫)

残穢(ざんえ) (新潮文庫)