BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ドリフターズ 第5巻

 今回も前巻から約1年半で無事発売。ヘルシングの頃の不定期ぶりが嘘のようなコンスタントな刊行ペースで、逆に怖くなりますね。以下、ネタバレを含む雑感となります。

  • 放っておけば星を滅ぼしかねない人間に代わり、亜人たちをその地位につかせ、なおかつこちらの世界の中世暗黒時代のような停滞の状態に永遠に置くことによって「救世」を遂げると語る黒王。こちらの世界ではその停滞はルネサンスやグーテンベルグ活版印刷、ルターの宗教改革といった革新的な出来事によって打破されることになりましたが、果たして黒王はどうやって停滞の状態を固定するつもりなのか。一方、ヘリボーンやデサントといった明らかに第二次大戦以降の戦術を機械化兵器の代わりに怪物を使って実現する黒王には、光秀も疑念を抱くことに。現代戦の知識を持ったまだ見ぬ廃棄物が黒王陣営にいるのか、あるいは、黒王自身が我々の予想する「あの人」ではないのか。
  • 邪魔なオルテの残軍を、手紙を2枚送るだけで壊滅状態に陥らせる信長。でも日本の戦国時代においては、こんなのは基本的な戦術でしかないというのが恐ろしいところ。信長も豊久も、「共通の敵を前にしても「呉越同舟」などというのはありえない」と言い切るのが、綺麗事が一切通用しない戦国の世を駆け抜けてきた男らしいですね。
  • エルフのホストクラブの店長をやる信長を妄想して「真島の兄さんみたい」と呟くサン・ジェルミ伯。本当に、どの時代からやってきたんだか。グ=ビンネン商会との和平交渉においてウ○コが切り札になるとは思いませんでした。
  • 山口多聞からの手紙を受け取って、ついに彼との対面を果たす菅野直。終戦の二週間前の時点からやってきた菅野に「日本はどうなったか」とは聞いても「勝ったか負けたか」などとは聞かない多聞丸。山本五十六もそうでしたけど、大本営と違って本当に賢い人たちは始める前から勝ち目なんてないことはわかっていたんですよね。「連合艦隊は滅んでいない。飛龍がここにいる。そしてここに提督とパイロットがいる。たった2人だが二航戦だ」は、この巻でも屈指の名台詞ですね。
  • 信長と与一が最初に根城にしていた城の廃墟には、なぜか信長と豊久、それぞれの父の名が刻まれた石碑が。今回一番謎めいたコマですね。
  • 進路上にある人間の村や集落を滅ぼしながら、帝都へと迫りつつある黒王軍。第5巻にして早くも決戦ムードが漂いますが、それを迎え撃つべく信長たちが選んだ戦場は、周囲を山に囲まれ、その山あいを通る複数の街道の結節点である盆地。言うまでもなくそれは豊久がこの世界へやってくるきっかけとなった「あの戦」と同じ地理的特徴を備えた場所。それを目にした豊久も、自分がここに呼ばれた理由を悟ることに・・・。
  • あとがきゆかいまんがはいつものジャンヌいじめではなく、ラスプーチンによる軍資金稼ぎのためのインチキ商売のプロデュース。ここだけはこれまでと比べてちょっとパンチが弱かったですね。カバー裏は「サツマトゥーン」。インクの色が赤しかない・・・。