BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

魔進戦隊キラメイジャー エピソードFINAL 感想

 ついに幕を開けたキラメイジャーとヨドン皇帝の最終決戦。ヨドン皇帝の唯一の弱点は、宇宙最強の硬さを誇る邪面に隠された真の顔。トドメを刺すためにデストリアを温存したいキラメイジャーは、クランチュラから聞いた「倒した敵の屍を食らうときのみ皇帝は邪面を外す」という話から、一つの作戦に打って出る…。

 

 前半はヨドン皇帝との最終決戦でしたが、その中でヨドン皇帝の素性についてまで明らかになるとは思いませんでした。ヨドン皇帝ももとはさしたる存在ではなかったというのは、デスガリアンのジニスあたりと同じ系譜に位置しますね。その強くなる過程で、自分が最も嫌う「仲間を求める」という行為を無意識的に行った結果、心に生まれたのがヨドンナとシャドンの人格だったと。瀕死だったヨドンナは、あんな仕打ちを受けながらも皇帝の「弱さ」の象徴である自分が消えることで、皇帝を絶対的な強者へと押し上げようとしましたが、結局のところ、自分の弱さと真正面から向き合って受け入れることもできない人間が、強くなれるはずもないんですよね。ヨドンナの最期の忠心も、結果的には彼女の願ったのとは全く逆の道へと皇帝を歩ませてしまったと思うと、なんとも不憫です。

 

 圧倒的な強さでキラメイジンとギガントドリラーを倒し、キラメイジャーの屍を食おうとするヨドン皇帝。その瞬間、倒したはずのキラメイジンとギガントドリラーが、皇帝の邪面を吹き飛ばす。ヨドン皇帝はイリュージョアの見せた幻覚にまんまとはまり、自ら弱点をさらけ出してしまったのでした。前回危惧した通り、やっぱり重要アイテムをそのへんに適当に置いといてしまったのが命取りになってしまいましたね。終盤になるまで姿を見せず、あれだけ慎重に立ち回っていた奴とは思えないうっかりぶり。歴代スーパー戦隊のラスボスの中でも不名誉な敗因として語り継がれてしまいそうです。まぁ、腐った芋羊羹を食わされて弱体化したのが敗因になった奴がいるので、それよりはマシではあるのですが…。

 

 人間大の大きさにまで縮んだヨドン皇帝と、キラメイジャーの最後の激突。ここで恒例の素面名乗り。ダイレンジャーとはまた違った意味で難易度が高すぎる、あの最後の決めポーズまでやってみせたのには驚きました。同時に、この恒例の素面名乗り自体が、仮面をかぶって強くなった気になっていた皇帝に対して、仮面などかぶらなくても素顔のままの自分で輝くことができるというキラメイジャーの対比になるという対比構造になったのには、見事としか言いようがありませんでした。そして、ヨドンナという自分の弱さを捨てて孤高の存在となって絶対的強者たらんとする皇帝に対して、弱さを含めて互いを認め合い、自らの持てる力を出し切って助け合うことでそれに立ち向かい、見事勝利するキラメイジャー。「五つの力を一つに合わせて」とゴレンジャーの主題歌に謳われた、スーパー戦隊の魂とも言える力と技と団結。キラメイジャーはこれまでの戦隊にも増して、それを体現して見せたのではないでしょうか。

 

 そして、最後の戦いから3か月後。久しぶりに集まった仲間たちに、充瑠はクランチュラがもう他の文明を侵略することはしないと約束してくれたことを報告。どうやら今後は悠々自適に創作活動に勤しみながら暮らしていくつもりのようですが、改心したり和解したりした悪の組織は今までにあっても、ただのお絵かきサークルになった悪の組織はさすがにこれが初めてですね。カナエマストーンの力でクリスタリアは復活を遂げ、新たに女王となったマブシーナが宝路に支えられながら国を導いていくことに。為朝たちも本来の仕事で活躍する中、充瑠は相変わらず柿原さんをやきもきさせながらもひらめきを爆発させ、そのスケッチブックに描かれたのは…!

 

 というわけで、今回も無事一年間、スーパー戦隊の戦いを見届けることができました。コロナという未曽有の危機に襲われ、この番組も始まってまもなく総集編が連続したり、主演の小宮さんが感染したりと、一時はどうなることかと思いましたが、その逆風を追い風に変えるがごとく、終わってみれば例年以上に素晴らしい作品になったと思います。テレビやネットを見れば、誰もが他人の欠点や失敗を探り、悪意の有無や事の大小を問わず悪事やミスを犯したものを叩こうとしているかのように見える、この世知辛い世の中。コロナによってさらにその閉塞感が深まる中、自分や他人のよいところを、時には普通なら欠点や短所とされてしまうようなことにまで見出だし、互いに認め合いながら自分らしく輝いていこう、というメッセージを体現した番組は、まさにこの時代にこそ最も必要とされ、生まれるべくして生まれたものなのではないか。そのようにさえ思えるほど、特にメッセージ性という部分においては他の戦隊よりも心の深いところにまで訴えかけてくる、そんな作品だったと思います。なによりそのメッセージを嫌味なくストレートに表現し、まさにキラキラ輝いていたキャストの面々は、毎週見ていてなんとも気持ちのよいものでした。願わくばこの作品を見ていた人達、特に子どもたちには、キラメイジャーのように自分や他人のよいところを探し、それを認め合って輝くことのできる人間であってほしいと、そう思います。この素晴らしい作品を作り上げてくれたキャスト、スタッフご一堂には、心からの感謝の気持ちを贈りたいです。一年間ありがとうございました。