初めて会う人に好きなものについて訊かれたときは、「怪」のつくものが好きだと答えることにしています。怪獣、怪人、怪物、怪奇、怪異・・・そしてもちろん、怪談も。
まだまだ暑い日が続いておりますが、カレンダーは既に9月となり、今年も夏は過ぎ去りつつある・・・ということを感じます。夏は暑いし汗ばかりかくし寝苦しいし食欲も失せるし・・・とろくなことがないので私の一番嫌いな季節なので、過ぎ去っていくのは大いに歓迎すべきことなのですが、唯一残念だったのは、今年もテレビでめぼしい怪談番組がなかったこと。3年前、NHKBSで「最恐! 怪談夜話」という、怪談話芸のスペシャリストたちが1時間半にわたってひたすら怪談を語るという素晴らしい番組があり、好評を博して翌年にはさらに30分時間を拡大して放送されたのですが、その後去年、今年と連続して放送はなし。今年の夏はオリンピックと重なったため局側も怪談などやっている場合ではないと判断したのかもしれませんが、まことに残念でなりません。
思えば私の子供の頃は夏ともなれば怪談や心霊写真特集を組む番組がいくつも放送されていたのに、最近はとんと見なくなりました。「子どもが怖がるから」という親の声が局に寄せられるようになったから、という話を聞いたことがありますが、何を馬鹿なことを言っているんだとしか言えません。怖がるからこその怪談ですし、それが嫌なら見なければいいだけの話でしょう。それに、親の言うことを聞かずに怪談の番組を見て夜中にトイレに行けなくなったり、一人で眠れなくなって親の布団にもぐりこんだりしてくるぐらいが、子どもとしてかわいらしいのではないでしょうか。ちょっと歪んだ見方かもしれませんけれど。
ただ、怖いばかりが能でないところが怪談の奥深いところ、一昨年に放送された、著名な文豪の怪談作品を有名映画監督がドラマ化した番組「妖しき文豪怪談」は、怪談の持つ「美しさ」も表現したよい番組でした。個人的には室生犀星の作品を映像化した「後の日」がおすすめ。
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ドラマを見た後で原作の小説を読むと、さらに切ない気持ちになります。
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