BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

狭いけど魅力的な怪獣迎撃シミュレーションの世界①「ゴジラ 列島震撼」

 もはやゲームのジャンルの一つとして不動の地位を獲得して久しいシミュレーションゲーム。一口にシミュレーションゲームと言っても、シムシリーズのような経営シミュレーションから大戦略シリーズのようなウォーシミュレーションまでその種類は多岐にわたりますが、その片隅に「怪獣迎撃シミュレーション」という極めてニッチなジャンルがあることをご存知でしょうか。

 怪獣迎撃シミュレーションとは読んで字のごとく、襲来する怪獣をいかに迎撃し撃退するかを楽しむシミュレーションゲーム。つまり、特撮映画やテレビ番組に登場する自衛隊その他の立場となって怪獣と戦うゲームです。ジャンル的にはものすごく狭いのですが、これがなかなか魅力的なのです。

 今回紹介するのは1995年にセガサターン用ソフトとして発売された「ゴジラ 列島震撼」です。

ゴジラ 列島震撼

ゴジラ 列島震撼

 タイトルからもわかる通り、これはゴジラシリーズを題材とした怪獣迎撃シミュレーションゲーム。プレイヤーはGフォース(平成ゴジラシリーズに登場する国連G対策センターの軍事組織)の新人指揮官となって、次々に日本に襲来するゴジラをはじめとする怪獣たちを撃退することが目的となります。

 システムは一般的なターン制ではなく、RTS。つまり、プレイヤーが部隊を動かす一方で、怪獣も同時に動き回り、放っておくとどんどん街を破壊してしまいます。

 このゲームの大きな特色として、ゴジラ映画における人間の防衛組織と怪獣の力関係が極めてリアルに表現されていることが挙げられます。プレイヤーが指揮できる部隊の主戦力となるのは、戦車や自走砲、メーサータンクなど、実際のゴジラ映画に登場したものばかり。対する怪獣たちはこれまた映画通り人類側の兵器とは比べ物にならない攻撃力と耐久力を備えており、正面から部隊をぶつけるだけでは勝ち目はありません。戦車などはゴジラの熱線を2,3発も食らえば撃破されてしまいます。ステージによってはモスラのようにこちらの味方をしてくれたり、GフォースメカゴジラやMOGERAのように怪獣並みの力を持つ兵器も登場しますが、自由に動かせなかったり、あまりあてにはなりません。

 そこで重要になるのは、「怪獣は攻撃を仕掛けると、攻撃したユニットを狙って動き始める」「怪獣は別の怪獣が近くにいると攻撃を仕掛け、互いに戦い始める」という習性。これを利用することが、怪獣撃退の基本となります。具体的に手順を挙げると

①戦闘ヘリなど移動速度の速いユニットで怪獣に接近。攻撃を仕掛ける。
②怪獣の注意を向けたら、攻撃と移動を繰り返しながら怪獣を徐々に別の怪獣へと誘導する。
③怪獣同士が戦い始めたら、部隊をその周囲に集結。怪獣の体力を見ながら、うまく共倒れになるように攻撃を仕掛ける。
④どちらかが倒れたら残った怪獣に集中攻撃、撃破する。

 というのがオーソドックスな流れです。基本はこの戦法に従っていれば割と簡単に勝てるのですが、例外なのは横浜を舞台にしたステージ7。ここではなんと、バトラ幼虫が2体同時に出現。しかも、モスラはおろか他のステージには出てくるゴジラすらなぜかこのステージには出てきません。スーパーメカゴジラも登場するのですが、これは自分で動かせないうえにイベントでまともに動かないので、ほとんど役立たず。同種の怪獣同士は戦わないため、実質的に自軍の部隊だけでバトラ2体を相手にする羽目になります。しかも、やっとこさ幼虫を倒したら、なんと今度は成虫になるという絶望的な仕様。このステージだけ実質的に4体の怪獣を自力で倒す羽目になるという理不尽な目に遭うことになります。

 この理不尽なステージを除けば、シミュレーションゲームとしての難易度は低め。ゴジラに思い入れのない人には物足りないかもしれませんが、ドットで描かれた怪獣や兵器、マップは当時としてはかなりきれいですし、なにより各ステージのBGMとして、伊福部昭をはじめとする作曲家陣による映画の劇伴がそのまま使われているのがゴジラファンにはたまりません。特に最終ステージで流れる「ゴジラ('84)」の「自衛隊マーチ」は、決戦というムードを盛り上げるのにこれ以上ないBGMです。

 ニコニコ動画にも素晴らしい実況動画がありますので、ご覧になればよりその魅力がわかるでしょう。

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