BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

キングコング:髑髏島の巨神 感想

 2014年の「GODZILLA」から始まったハリウッドの怪獣映画シリーズ「モンスターバース」。あれから3年とだいぶ間が開きましたが、ついにその第二弾が公開。主役となるのは世界最初の映画怪獣といっても過言ではなく、ゴジラとの対決も経験済みの、あのキングコング。公開初日となる今日、見てまいりました。例によってネタバレを含みますので、未見の方はご注意を。

 長きに渡ったベトナム戦争が、パリ協定によって(アメリカにとっては)終戦を迎えた1973年。「GODZILLA」にも登場した秘密機関モナークの科学者たちは、傭兵のコンラッド、戦場カメラマンのメイソン、パッカード大佐率いる米軍部隊とともに、常に周囲を吹き荒れる嵐によってこれまで誰も上陸した者のいない「髑髏島」への調査に向かう。だがそこは、人類の想像を絶する巨大な怪獣たちが住まう魔境であり、そしてその島の生体系の頂点には、島の守護神として君臨する巨大な類人猿、キングコングが存在したのだった・・・。

 本作品を一言で表現するなら、「ウルトラマンの登場しない怪獣無法地帯」。我らのヒーローウルトラマンも、心優しいピグモンも存在せず、ただレッドキングのような怪獣たちが熾烈な生存競争を繰り広げる場所に、突如として放り込まれた人間たちが島からの脱出をかけて決死のサバイバルを強いられる様を、「GODZILLA」と同じくハリウッドの潤沢な予算のもととびきり派手に描いた、という感じです。とにかく次々に怪獣が現れるというだけで、怪獣映画ファンとしては心躍らされます。特にコングの宿敵として登場するスカル・クローラーは、鳥の骸骨のような頭に毛のない体、後足がなく前足だけで素早く這いずり回る気色悪さがインパクト絶大です。

 さて、今回の主役たるキングコング。これまで幾度となく映画化されてきましたが、本作のコングはいずれゴジラと対決させることを視野に入れてか、アメリカ映画のキングコングとしては最大の30m。米軍の通常兵器が全く通用せず、攻撃されてもひたすら人間には無関心を貫いたゴジラと違って、島に爆弾を投下した米軍のヘリに怒って襲ってくるという登場の仕方であり、その行動には島の守護神としての強い自覚が見られます。引っこ抜いた木をヘリに投げつけたり、大木を引っこ抜いて棍棒としてスカル・クローラーを殴ったりと、知能も高そう。キングコングといえば美女を気に入ることが特徴ですが、今回のコングもヒロインを救うシーンはありますが、それは事前に彼女が悪い人間ではないことを理解していたからであり、どちらかというと従来のようなフェミニストではないという印象を受けました。また、ゴジラと違って73年当時の米軍の火器による攻撃で出血するなどダメージを負う描写も。うーん、今回もやっぱりこのままゴジラと戦うには厳しいような・・・。

 あえて物語の舞台を1973年に設定した意図は明白で、明らかに「地獄の黙示録」が元ネタになっていますね。サミュエル・L・ジャクソン演じる、コングによって部下を殺されたために病的なまでにコングを殺すことにこだわるパッカード大佐。髑髏島に赴く以前から、ベトナム戦争が多くの部下の犠牲を出しながら不名誉な終戦を迎えることに鬱屈した感情を抱え、コングとの戦いに新たな戦場を求めていく異様さは、確かに「地獄の黙示録」のカーツ大佐やキルゴア中佐に重なるものがあります。MCUでは肝心なところで役に立たないニック・フューリーを演じているサミュエル・L・ジャクソンですが、本作ではコングと真正面からにらみ合う気迫と狂気の軍人を見事に演じています。

 そしてエンドロールのあとには、「本来の地球の支配者はコングだけではない」という証左が次々と提示されることに。その中にはゴジラが、そして日本のゴジラファンにはおなじみのアイツやアイツ、さらにはアイツの姿までが。やはり、本気でやるつもりなのか・・・!