来月公開のハリウッド版ゴジラに先駆け、今日から公開された1954年の元祖ゴジラのデジタルリマスター版を、日比谷まで見に行ってまいりました。
映像に関しては完全に素人なので、デジタルリマスターで映像がきれいになったと言われても、個人的には河内桃子がアップになった時に「そういえば・・・」と思う程度。私としては映像や音質の向上云々よりも、今までビデオやDVDで何度も見たこの作品を映画館のスクリーンで見られるということ自体が大事だったわけであり、それについては十分に堪能させてもらいました。やはり怪獣映画は劇場で見るものです。
それにしても、見れば見るほど完璧な映画ですよね。それまで日本映画にはなかった「怪獣映画」という映画を、よくもここまで完璧に作り上げたものです。特撮ももちろんすごいのですが、私がこの映画が他の怪獣映画と違っているのは、ドラマが単に主人公たちの周りで展開するだけではなく、ゴジラによって被害を受ける市井の人々の姿が細かく、克明に描かれているところだと思っています。具体的に挙げると
- ゴジラに沈められた船の乗組員の安否を尋ねて海上保安庁の職員に詰め寄る家族
- 放射能に汚染された井戸の水を使うなと言われ困惑する大戸島の主婦たち
- ゴジラの記事の載った新聞を見ながら疎開を口にする男女
- 船が出せず生活が成り立たないことに対策本部へ陳情に来ている漁業関係者
- 風呂敷を担ぎ、家財道具を乗せた大八車を押す避難民
- 死んだ母親が担架で運ばれていき号泣する少女
もちろん、有名な名もなき親子やテレビ塔のアナウンサーも。後の怪獣映画が怪獣による破壊シーンや怪獣同士のバトルシーンばかりに力を入れていくようになったのに比べると、怪獣の出現によって直接・間接に影響を受ける市井の人々の姿が次々に映し出されることによって生まれるこの迫真性。3.11の悲惨な被災地映像を目にした今、それは初めてこの映画を見た時よりもさらにはっきりとしたものとして私の目に映りました。