ついに始まったエラスとの最終決戦。騎士竜総がかりでも一歩も引かないエラスでしたが、事前の打ち合わせ通り騎士竜たちの力を込めたリュウソウカリバーをエラスに突き立てるコウ。しかし、エラスを完全に封じる前にリュウソウカリバーは折れてしまい、さらにエラスの触手に貫かれたコウが倒れてしまう…。
レッド不在、さらに素面名乗りなし。スーパー戦隊の掟破りとしか言いようのない異色の最終決戦ですが、それがなんともリュウソウジャーらしいですね。ゆっくりと歩きながらの変身と静かな名乗りはとてつもない迫力を感じましたし、なおかつこれまで言わなかった「正義に仕える六本の剣」をこの最終回に持ってきたのはしびれましたね。一方エラスに取り込まれたコウもまた、エラスと対話。エラスがずっと一人で生きてきたということに改めて気づかされましたが、前回コウたちが見た夢の中に仲間がいなかったのも、エラスが一人で生きてきたため仲間というものを知らなかったからだったのでしょうか。エラスのような永遠の命がないからこそ、失敗を乗り越え生命を笑顔とともにつなぎながら未来を目指していくことができる。それはまさに、リュウソウジャーのこの一年間の歩みの中で得られたものそのものでしたね。そして、メルトたちがエラスにトドメを刺すと同時に、エラスも自分もまた不要な存在になったことを悟り消滅。残されたリュウソウルの中のコウにメルトたちは手を伸ばし、彼を救いだすことに成功するのでした。最後の戦いが敵を倒すのではなく仲間を救い出すことというのは、実にスーパー戦隊らしい一方で目新しいものでしたね。
さて、こうした一連の戦いに加勢するでもなく、最初から最後まで隠れて見ていただけだったワイズルー。まぁ、自分が主役じゃないと気が済まなかったあのワイズルーが、観客に徹してリュウソウジャーに「コングラチュレーション」と拍手まで贈ったのですから、それは大きな心境の変化があったのでしょうが。もう地球侵略の意思もなくなったのか、勝手にクレオンの星へ行くと言い出し、生きていたプリシャスまで強引に巻き込んで去っていきました。物語開始当初からの敵が倒されるでもなく戦隊と和解するでもなくただただ勝手に去っていくというのも前代未聞ですし、そもそも何故クレオンがドルイドンに協力していたのかという最初からの謎もわからずじまいなんですが、ここまで来てしまったらもう「これでいいのだ」と笑って納得するしかありませんね。
こうしてエラスは消えドルイドンも去り平和が戻った地球で、リュウソウジャーは眠りについた騎士竜たちの前にリュウソウケンとモサチェンジャーを納め、それぞれのやりたかったことへと歩み出すことに。バンバと別れ旅に出たトワは、あの女性レーサーに会いに行ったんでしょうか。それぞれ歩き出したリュウソウジャーですが、リュウソウ族の子供たちのために学校を開いたアスナが意外に一番しっかりしているように見えましたね。一方、長老は調子に乗って事業を拡大しフィットネスクラブに手を出したことが原因で事業に失敗していたというどうでもいいことまで明らかに。全く役に立たなかったわけではありませんでしたけど、この一年ほぼ自分の商売しかしてませんでしたねこの人。いくら失敗しても立ちあがれると言ってきたとはいえ、こんなところでその実例を出さんでも。マックスリュウソウチェンジャーを納めたコウの前にはナダの幻影が。そして最後は一時帰国してきたういを交えていつものしょうもない騒ぎの中で物語は幕を閉じるのでした。
さて、シリーズの総省。物語の運び方が精緻を極めた前作ルパパトに対して、それを差し引いてもあまりに粗削りで洗練されていない序盤の展開にはどうなることかと肝を冷やしましたが、やがてその粗削りさを自覚したのか、それを欠点ではなく持ち味として生かしていったことで、この作品独特の魅力へと昇華していった様は目を見張るものがありました。ほとんど昭和的ともいえる細かいことを気にしない、時に強引な作風とその中で動くリュウソウジャーは「蛮族」という誉めてるんだかけなしてるんだかよくわからない呼び方をされていましたが、これこそまさに本作が独自のノリを持つユニークなものであることを示す証左であり、ナダの死に代表されるあまりにも突然の予想のつかない展開には何度も驚かされました。その一方でスーパー戦隊の魂ともいえる仲間たちの絆については物語の積み重ねの中で丹念に描いていき、それは最終回とその直前の回で爆発し、長いスーパー戦隊の歴史の中でも記憶にとどめるべきものとなりました。今となっては、来週からはもうこのノリを見られないことに寂しささえ感じます。スーパー戦隊の歴史はこれからも続いていきますが、その中でもリュウソウジャーはその異質な魅力とともにファンの記憶に残り続けていくことでしょう。また一年楽しませてもらったことを、スタッフ、キャストの皆さまには心から感謝します。