BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

機界戦隊ゼンカイジャー 第1カイ! 感想

 今年も幕を開けた新たなスーパー戦隊の物語。さらに今作は、記念すべき45作品目なのですが…。

 

 これまでに活躍してきたスーパー戦隊のいた世界をはじめとする、数々の並行世界をトジルギアという歯車に閉じ込めてきた、機械生命体キカイノイドの住む世界「キカイトピア」の悪の王朝トジテンド。しかし、最後にターゲットにした世界だけはなぜか閉じ込めることができず、そればかりかキカイトピアの一部と融合してしまうことに。それから1ヶ月。人間とキカイノイドが次第に打ち解け始めた頃、封印を諦め侵略に乗り出したトジテンドが人間を襲い始める中、とにかく「世界初」のことを成し遂げたい青年、五色田介人は、両親が残してくれたアイテムを手に、偶然出会ったキカイノイドのジュランと共に、「機界戦隊ゼンカイジャー」を結成してトジテンドとの戦いを開始する…。

 

 いきなり歴代スーパー戦隊が世界ごとなすすべもなく封印され、さらに機械生命体の住む世界の一部が人間の世界と融合してしまうというジュウオウジャー最終回のようなとんでもない展開から始まったゼンカイジャーの物語。ただ、よくよく考えると、世界を封印してそれで「征服」と言えるのかどうかは疑問符がつきそうなんですが…。たった1ヶ月で割とスムーズに人間とキカイノイドの共存が進んでましたが、もともとスーパー戦隊の世界はライダーと違ってこの手の異種族との共存に寛容(なにせ悪の幹部が街の和菓子屋に芋羊羹を買いに来ても普通に売ってたぐらいですから)なので、そのへんはとりあえず納得。面白いのは、これまでの戦隊に出てきた国家タイプの悪の組織はトップから下っ端まで全員悪者(というか、国民と呼べるものが存在していたのかさえわからないのがほとんど。戦闘員に至っては自由意思があるのかさえ怪しいのも珍しくないし)だったのに対し、トジテンドの場合は悪者は一部の支配層で人間はおろか同じキカイノイドである一般キカイノイドまで強圧的な支配を強いており、一般キカイノイドの方もそんな支配層に対して反感を募らせている、というところ。社会の上層と下層がはっきりと二分化され、上からの差別とそれに対する下からの反抗が深刻な軋轢を生んでいる。SFではもはや手あかのつきまくった典型的なディストピアですが、意外なことにスーパー戦隊でこういう国家が出てくるのは長い歴史でも史上初。このへんはただのお祭り騒ぎ的なアニバーサリー作品では終わらせないぞという、進取の気合が感じ取れますね。

 

 一方で、作品の基本的な方向性は、スーパー戦隊の原点に還るような、ノリと勢いと楽しさを基本としたものですね。介人の性格も、わかりやすい正義感の持ち主でノリと勢いでチームを引っ張っていく、いかにも2000年以降主流となったタイプのレッド(レッドじゃないけど)。一方その最初の仲間となったジュランは、パーティー好きの陽気なおじさん(見た目からはおじさんなのかよくわからないけどどこでおじさんと判断したんだろ介人…)という、のっけからなかなか尖った個性の持ち主。センタイギアを使った歴代戦隊の力を借りての戦闘も、ゴーカイチェンジほどのインパクトはないものの、今後どんな力が飛び出してくるのか楽しみです。人間1人、ロボ4人という異色にもほどがある戦隊ですが、この船出の回を見れば、今年も一年楽しませてくれそうだという期待は確信と言えるものになりました。