BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

仮面ライダーリバイス 第4話 感想

 誘拐事件は解決したものの、犯人はバイスタンプを持っていなかった。そんな状況でもいまだにフェニックスと契約しない一輝にとうとう苛立ちを爆発させる大二。そのまま一輝はさくらの付き添いで幼馴染の彩夏の妹が出演するライブに向かうが、その席で彩夏は妹にばかりかまけて自分を顧みない母親に不満を爆発させ、コングデッドマンを生み出し、さらにはアギレラに唆され、上級契約を結んでフェイズ2になってしまう…。

 

 彩夏の怒りの爆発までの過程を、嫌らしいまでに丁寧に描いてくれますね。前回の狂言誘拐自体が、母親に対する彼女の愛情の確認でありSOSであったわけで、それに応えなかった母親に対してライブ会場でそれを責め、それに対して言い訳をしたからこうなった。彼女としては母親に二度までもチャンスを与え、そのいずれでも裏切ったのですから、これは見ている側にも仕方ないと思わせます。その怒りの爆発のしかたはこの作品が仮面ライダーだから怪人になって母親を襲うというかたちになりましたけど、そうではなかったら包丁で母親を刺すとか、もっと生々しいかたちになっていたに違いありません。彩夏に対して家族なのにどうしてこんなことをするんだという一輝の問いに対する、「幸せな家族ばかりじゃないんだよ」という彼女の答えは、第4話にして早くもこの作品が扱う核心的なテーマに触れてしまったように思えました。前回の感想でも書きましたが、戦前から戦後、大家族から核家族へという家族のかたちの変貌を経る中で、映画やドラマでは問題を抱えた家族や家族の崩壊が描かれることは珍しいことではなくなっていきましたが、こと子供向け番組である特撮ヒーロー番組においては、家族は仲良く一致団結して生きていくことを美徳とする家族神話の絶対性が今日に至るまで生きてきたわけですが、この作品はとうとうそこにすらメスを入れようとしているのではないかと、見ていて戦慄が走りました。

 

 彩夏がデッドマンと上級契約を交わしてしまうという最悪の状況の中、一輝と大二も大喧嘩。まぁ一輝が悪いのはわかるんですが、彼がフェニックスと契約しないことにどんな問題があるのかがいまいちピンときませんでした。今までだってフェニックスの正規隊員である大二がサポートすることでちゃんと戦えてきたし、契約を交わしてもそれは変わらないでしょうから、フェニックスと契約することにどんなメリットがあるのかがよくわかりません。そんな一輝に、他人に寄り添いその心を理解しようとすることの大事さを説く幸美。それにしても母ちゃん、1話でけがをして4話でもまだ入院中って、一般人であることを差し引いても長すぎやしませんかね。そろそろ退院してくださいよ。

 

 ここまでの展開のシビアさと比べてその後の展開は、過ちを悟った母親が彩夏に必死に詫びて愛情を伝えるも、結局は一輝が暴走した彩夏と戦い、ライダーキックで彩夏とデッドマンを分離して撃破することに成功、一輝と大二も仲直りを果たす、という、ヒーロー番組らしいものとなって終わることになりました。一度交わしてしまえば二度と人間には戻れない、とアギレラが言っていた上級契約が、ライダーキックであっさり破られてしまうのは、悪く言えばご都合主義的でしょう。もちろん、だからといって彩夏を分離できないままデッドマンを倒していたら、それこそこっちもどんな顔をして見ればいいのかわからなくなるので、ハッピーエンドに収めざるを得ないのは重々承知していますが。そうしてハッピーエンドに収めてもなお、彩夏と家族がその後どうなったかは描かれぬまま。仮に母親との関係を修復できたとしても、人質にされて殺されかけた妹の方が彼女を許すとは、到底思えません。家族の崩壊を描いた以上は、壊れた家族は元に戻ることができるのか、壊れたままなのか、その結末まで描くべきだと思うのですが、そこまで踏み込むのはファイズあたりの頃ならいざしらず今となってはそこが限界なのか、それとも、今はまだそこまで踏み込むことを避けているだけなのか…。