BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

暴太郎戦隊ドンブラザーズ ドン44話 感想

 年明け早々椎名ナオキの正体を明かし、一気に風呂敷をたたむべくアクセルを吹かしてきましたが、今回はついに、翼と彼以外のドンブラザーズメンバーが互いの正体を知るときが訪れることに。ここまでかかった話数、実に44話。ここまで引っ張ってきたからには、それにふさわしい特大の衝撃が彼らを襲うことになるだろうな…と思っていたら、物語はそれとはまた別の重要なストーリーラインである翼、雉野、ソノニ、夏美(鶴の獣人)の複雑な愛憎劇のクライマックスとして展開。翼と出会って人の愛を知り、翼の愛を得ようと彼に嘘までついたソノニでしたが、やはりその愛がゆえに嘘をつきとおすことができず、鶴の獣人にとどめを刺そうとした翼から夏美をかばって深手を負う、という展開は、まさに井上敏樹の描く愛憎劇の極みですね。その後、みほ(夏美)を傷つけられた怒りのまま翼に攻撃を仕掛ける雉野。その中でついに両者変身して激突したわけですが、互いに必死すぎて相手の正体を知ったことへの驚きは一切描かれないというまさかの展開。雉野の攻撃からまたも翼をかばってソノニが深手を負ったところへ、それまでの流れとは一切関係のないヒトツ鬼が突如乱入。そこへタロウたちもやってきて、ついに6人同時変身が実現するのですが、ここでも翼=イヌブラザーだったことに驚くことは一切なく、いつも通りヒトツ鬼を倒すことに…。いやぁ、まさかここまで長々引っ張ってきた秘密が暴かれる展開に対して何のリアクションも描かないというのは、さすがに予想外でした。井上氏にとっては、イヌだけ互いに正体を知らないというのは単に物語を面白くするためのスパイスに過ぎず、彼の中でそれによって物語を面白くする段階は終わったので、そのスパイスをただ調味料入れに戻しただけ、ということなんでしょうか。どうあれ、並みの脚本家にできることじゃありません。

 

 その後、二度も深手を負ったソノニは翼の前でついに命を落としてしまうものの、そこへマスターが現れ、これまでにたまっていたポイントで彼女を生き返らせることに。しかし翼はようやく彼女の自分に対する愛に気づきながらも、それを突き放すように二度と姿を現すなと言い残し去っていく…。普通ならあのままソノニを死なせた方が美しいと考えるでしょうが、それだとジェットマンのマリアやファイズの結花と同じになってしまうと考えたのか、翼にとってもソノニにとってもさらに残酷な、まさに愛憎の果てと呼ぶべき結末を「この方が美しいだろう?」とばかりに出してくるとは。やはり特撮ヒーロー番組でラブロマンスを描かせたら、彼の右に出る者はいないですね。そしてその後、寝床についたところで翼=イヌブラザーだったことにいまごろ驚愕の叫びをあげるはるか。この子アホなんか…。

 

 そして、こうした密度の高い愛憎劇が繰り広げられた一方で、ジロウがルミちゃんとの2ショット写真を雉野に見せるも、そこにはジロウしか写っていない…という背筋がぞっとするような展開が。ここへ来てのどかな田舎としか誰にも思われていなかったジロウの故郷が一転、恐るべき真実の隠された魔境である可能性が出てきましたが、果たして再び帰京するジロウに同行することになったタロウを待ち受けているのはなんなのか…。