突如出現し暴れる怪獣から、宇宙からやってくる侵略者から、我々人類を守ってくれる光の巨人・ウルトラマン。しかし彼らは、常にその本来の姿でいるわけではありません。よく知られている通り、彼らは普段は人間の姿となって活動しており、いざ怪獣や宇宙人によって危機がもたらされたとき、本来の姿である光の巨人となって立ち向かいます。これはウルトラマンのみならず、その後に数多く作られた「巨大ヒーロー」というジャンルに属するほとんどのヒーローたちのスタンダードとなった設定の一つです。しかし、一口に人間の姿になっているとはいっても、実際にはそこには大きく分けて2つのタイプがあります。
- 一心同体タイプ
- 直接変身タイプ
だいたいこんな感じでしょうか。これに関して私には、子供の頃から抱いてきた一つの疑問があります。
それは、初代ウルトラマンと彼が一心同体になった科学特捜隊のハヤタ隊員についての疑問です。そもそも、ウルトラマンはなぜハヤタと一心同体になることになったのか。彼は凶悪な宇宙怪獣ベムラーを怪獣墓場に護送する途中ベムラーに逃げられてしまい、追跡している最中にハヤタ隊員の操縦するジェットビートルに激突。誤って彼を死なせてしまったウルトラマンは、彼と一心同体となって地球を守ることになった・・・というのが、ファンの人ならばもはや説明の必要もない経緯です。パトカーが凶悪犯を追跡中に一般市民を撥ねてしまったみたいで、宇宙人とのファーストコンタクトとしてはお世辞にも結構なものとは言えませんが、本題はそこではないのでこれ以上は何も言いません。とにかくこうしてウルトラマンとハヤタは一心同体となり、怪獣や宇宙人に立ち向かっていくのですが、私が昔から疑問に思っていたのは、この時「ハヤタ」として振る舞っていたのはハヤタ本人だったのかウルトラマンだったのか、つまりはハヤタとウルトラマン、どちらの人格が前面に出ていたのか、ということです。上で解説した通り、一心同体タイプのウルトラマンは、人間の姿の時はその人間の意識が前面に出ているのが普通です。意識までウルトラマンが前面に出てしまったら地球人の体を乗っ取ったに等しいので、これは当然のことでしょう。このタイプのウルトラマンと一心同体になった地球人は、自分がウルトラマンに変身できることに驕ってしまい、それがもとでウルトラマンが力を貸してくれずいざというとき変身できずにピンチに陥る、という目によく遭うのですが、このように人間らしい失敗をするからこそ、ウルトラマンと一体化しても人格は元の人間のままなのだということを知ることができるのです。ところが、ハヤタはそういう慢心などからくる失敗を見せることがありません。絵に描いたように模範的な善人で、ウルトラマンと一心同体になる前と後で周囲の反応が変わらなかったことから察するに前からそうだったようですが、それゆえに前面に出ているのがハヤタの意識なのかウルトラマンの意識なのか、その区別が他の一心同体タイプのウルトラマンと比べてつきにくいのです。加えて、地球の自然に見とれたり、心ならずも倒さなければならなかった怪獣たちに詫びの言葉を送ったり、もしかして本当はウルトラマンがハヤタとしてふるまっているんじゃないか?とも思えるようなシーンもあって、ますますわからなくなります。ウルトラマンに関する本も結構読んできましたが、いまだにこれに関して明快な答えには出会っていません。あるいはもしかすると、この時ハヤタとウルトラマンは意識レベルでも一体化して、ハヤタでもウルトラマンでもない第三の人格が彼を動かしていたのかもしれませんが・・・。いずれにせよ、最終回でウルトラマンと分離したハヤタは彼と一心同体になっていた間の記憶を全て失っていたため(ウルトラマンが故意に記憶を消したのか、分離したことで自然にそうなったのかも不明)もはやそれはハヤタ本人にもわからない謎となってしまいました。