BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ウルトラマンZ 第18話感想

 地中から出現したパゴスの迎撃に当たるハルキとヨウコ。しかし、その目の前でパゴスは突如煙のように消え失せてしまう。パゴスが消失した現場を調査していたハルキは、そこで出会ったカオリという女から「私を殺して」と懇願されるが、彼女もまた忽然と姿を消す。パゴスの消失と同時に街で相次いでいた失踪事件の現場の全てにカオリが居合わせていたことに気づいたハルキは、彼女を探し始めるが…。

 

 2020年。それはウルトラシリーズのファンにとっては、特別な意味を持つ年。かつて、「2020年という未来の時間を持つ星」から、老いた肉体に代わる新たな肉体を求めて地球人を誘拐しに現れた宇宙人がいた。そして、この地球の時間もまた2020年となった今、奴らは再び現れた。「2020年の再挑戦」とは、まさにケムール人の再登場に相応しく、そしてまさに今年でしか実現できない話でした。人間ばかりか怪獣までもが消失する事件、そしてその現場に現れる謎の女…と、物語全体に漂う空気も、まさにウルトラQ。そして、ケムール人のアイコンとも言える観覧車の前で巨大化したケムール人とゼットの戦いが開始。しかし、まさかカオリがケムール人から「生えてくる」とは思いませんでした。あんな意志の強い人間と一心同体になってしまったのが、ケムール人の運の尽きでしたね。少し前だったらカオリごとケムール人を倒さなければならない重い展開になっていましたが、ベリアロクのおかげでカオリと分離したうえでケムール人を倒し、消失液を詰めた爆弾も次元の彼方に飛ばして処理に成功。いやはや、ベリアロク様様です。全てが終わった後、54年前にもケムール人が現れて同様の事件を起こしていたこと、民間人と警察が協力してそれを解決したことが判明。この宇宙にも万城目やユリ子や一平がいたかはわかりませんが、ヘビクラ隊長は彼らを「偉大なる先人たち」と呼ぶのでした。彼にとってそれは、単に宇宙人の陰謀を退けたというだけでなく、ウルトラマンの力を借りずにそれを成し遂げたという意味において「偉大」と評したのでしょうけれど…。

 

 前述したようにもはやケムール人のアイコンとなっている観覧車、ひいてはそれが置かれている「遊園地」ですが、今回改めて両者の関係について思うところがありました。ケムール人が最初に現れた1966年、高度成長期の真っただ中、「遊園地」は雨後の筍のように日本各地に作られ賑わいを見せましたが、その後の景気後退、ディズニーランドやUSJといったテーマパークの進出によって、そのことごとくが姿を消していき、奇しくも今年には代表的な遊園地であるとしまえんもまた閉園しました。自らの肉体の老化により地球人の誘拐に手を染めることになったケムール人。「衰退」を具現化したような宇宙人と、1966年当時は「繁栄」の象徴であった遊園地との組み合わせには皮肉なものがありましたが、時を経て既に遊園地もまた「衰退」の象徴と化した今、同じ組み合わせからは、二重の意味での「衰退」が感じられました。最初は東京オリンピックを2年後に控えた年に現れ、二度目は東京オリンピックが延期となった年に現れたケムール人。彼らは宇宙人であると同時に未来人でもありますが、次の「挑戦」があるとしたら、その時この国はどのような姿になっているのでしょうか…。