BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ウルトラマンZ 第15話感想

 ブルトンが倒されたことによって生じた宇宙のひずみから、虚空怪獣グリーザが出現。急遽戻ってきたジードと共に迎え撃つゼットだったが手も足も出ず、グリーザを止めるためにジードが取り込まれてしまう。状況の打開のためには虚無そのものであるグリーザにも対抗できるほどの理屈を超えた力が必要だとハルキはゼットから聞かされるが…。

 

 ニュージェネシリーズのラスボス怪獣の中でも1,2を争うぐらいの危険度を誇るグリーザがまさかの登場。生みの親である田口監督が自らメガホンをとっただけあり、だいぶアホになっていたギルバリスとは違って、ウルトラマンX最終回1話前でXioの面々と視聴者を絶望のどん底に叩きこんだ時と変わらない…というより、むしろパワーアップしてるんじゃないかとさえ思える絶望的な強さと恐怖を、ゼットとジードが二人がかりでも手も足も出ない戦いで見せてくれました。前々から触れることすらできない第二形態が一番強いんじゃないかと思っていましたが、その期待にこたえるかのように終始第二形態のままで戦っていたのも満足です。特にジードを取り込んでレッキングバーストを放ったのには驚愕しました。こいつがただの怪獣ではなく、今後も何度でも現れる可能性がある宇宙規模の自然現象みたいなものだという事実には、改めて寒気を覚えます。

 

 そんなグリーザにエックスが勝つことができたのがほとんど奇跡のようなことだったことからも、グリーザを倒すためには理屈を超えた力が必要だとゼットが言うのにもうなずけます。そんな話を盗み聞きしていた(あの異空間での会話をよく盗み聞きできたな)ジャグラーは、必要なメダルであるベリアルメダルを手に入れるため、ハルキに車を運転させてある場所へ(後部座席から「あ、そこ右」とか言ってくるのがとってもシュール)。やってきたのはそう、カブラギのとこ。もう完全に居所を掴まれちゃってます。そして不意を突かれて捕まり、刀と銃を突きつけられて脅され、ベリアルメダルを差しだす羽目に。パワーアップのためのアイテムを手に入れる方法が、まさかのカツアゲ! ファイブキングへの変身に必要なメダルもいつのまにかかっぱらわれてましたし、もはや完全にジャグラーの財布みたいな扱いです。もはや黒幕と呼んでよいのかどうかさえ怪しい扱いで、なんだか気の毒になってしまいます。

 

 そんな入手の方法が力ずくなら、ゼットライザーへの装填を拒むベリアルメダルを装填する方法も、ハルキとゼットの二人がかりで強引に押し込むという力技。まぁこの二人らしいと言えばらしいのですが、かくして最強形態・デルタライズクローへと変身するゼット。その強さはグリーザと互角の戦いを繰り広げ、取り込まれていたジードを弾き出す、まさに理屈を超えたもの。さらに「宇宙に開いた穴」そのものであるグリーザを唯一止められる、グリーザ自身の体内に存在するという「宇宙を縫う針」を取り出すべく、グリーザの体内に腕を突っ込むゼット。そして、引き抜かれたその手に握られていたのは…「ベリアルの生首がついた剣」としか言いようのない、インパクト絶大の代物。そう、玩具の発売が告知された時点で話題をかっさらっていた幻界魔剣ベリアロクの登場です。しかもベリアルの声でしゃべるわ、不遜な態度で気分が乗らないと力を貸してくれないわ、とても難儀。ただ、ベリアルに似ていてもあくまでグリーザの中にあった「針」がジードのもつベリアル因子の影響を受けてああなったと思しきもので、ベリアル本人が姿を変えたものとかではないので、ハルキがちゃんと礼儀正しく応対すれば割と素直に言うことを聞いてくれるあたりがせめてもの幸い。このときハルキをちゃんと名前で呼んでいるのが、本人ではないとはいえベリアルが初めて地球人の名を呼んだ記念すべき瞬間のようで、感慨深いですね(あれだけ尽くしたのに最後までストルム星人としか呼んでもらえなかったフクイデ先生が地獄で歯ぎしりしてそうですが)。そしてベリアロクを手にしたゼットは必殺技デスシウムスラッシュで見事グリーザを撃破するのでした。

 

 最初ネットでその姿を見た時は「どういう経緯でこんなのを出すんだ」と思っていたベリアロクですが、まさかこんなかたちで出してくるとは。よく見るとベリアルの生首がついているのと色以外は形状も役割もエクスラッガーとそっくり。おそらくはああいうデザインの玩具として売り出す計画が先にあったと思われますが、「エクスラッガーと同じ役割を持つ道具として出すためにグリーザを出す」「あの形になる理由としてジードを出す」という展開を用意して、あんなイロモノとしか言いようのない代物になることに論理的必然性のとれた説得力を与えるというのは、まさにウルトラCとしか言いようのない離れ業です。こんな展開を考えるには相当頭をひねったに違いないので、感謝と敬意の念を抱かずにはいられません。また、ラストにヒカリにジードライザーを直してもらったことでプリミティブの姿で現れ、「ウルトラマンの使命」を語って去っていく、一人前のウルトラマンとなったジードの姿も感慨深かったですね。一方、またしても予期せぬ災厄の出現に、不本意ながら頼りたくもないウルトラマンを頼らざるを得ず、グリーザ撃破に喜ぶヨウコとユカとは対照的にうんざりした顔をしていたジャグラー。以前推測した通り、彼の目的がウルトラマンを不要とするだけの戦力を地球人に与えることだとしても、さすがにグリーザみたいなのが来てしまったらどうしようもないのではないでしょうか。仮にグリーザを鎮圧できるような特空機を作れたとしても、それはもうそいつの方が脅威ですし…。