BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

今週の特命戦隊ゴーバスターズ

 最終回。

 どうにかエンターを巻き込んで亜空間に突入することに成功したゴーバスターズ。マサトの指示で彼の本体が安置されている格納庫に集合しようとするが、ヒロムとヨーコの前にエンターが立ちはだかる。苦戦する2人だが、GT-02の放ったミサイルによって落石を起こしエンターを下敷きにし、その隙に合流に成功。エンター、この期に及んで「どこを狙っている?」なんてフラグ全開のセリフを口にしてしまうとは・・・。

 格納庫に集まったヒロム達にマサトが語る、エンターのバックアップデータ削除の方法。それはヒロムの体をデータ化し、マサトの本体にカードを移すというもの。しかし、そんなことをすればマサトの本体はバラバラになってしまう。なんとか他の方法を探ろうとするヒロム達だが、すでに覚悟を決めていたマサトは彼らを叱咤し、実行に踏み切らせる。この場面の松本さんの演技、すさまじい迫力でした。そして、リュウジたちがエンターを足止めしている間にカードをヒロムからマサトに移動させることに成功。もくろみ通り、マサトの本体はカードごとバラバラになって消滅する。「13年余分に生きられてよかったな・・・」とつぶやくマサト。ヒロム達に両親を救い出すために努力した13年があったように、マサトにも元に戻るために努力した13年があったはず。それを今、ヒロム達と世界を救うために「13年間余分に生きられた」と喜べることにも、彼の覚悟を感じました。

 バックアップデータを削除されたことは、エンターもすぐに感知。そして激怒する。その怒りのままメガゾードに乗り込み、ゴーバスターズを圧倒するエンター。対抗するにはこれまでにない攻撃が必要。ヒロムはゴーバスターエースでレッドバスターのような高速移動攻撃を敢行、その隙をついてバスターヘラクレスとゴーバスターライオーが必殺技を叩き込み、メガゾードを撃破する。次々に新たなバスターマシンが現れても、最後までエースはその中心として大活躍しましたね。

 メガゾードから脱出したエンターに対し、最後の決戦を挑むゴーバスターズ。エンターの猛攻の前にダメージを受けながらも、彼らは決してひるまない。所詮は不完全な人間だとヒロムを蔑むエンターに対し、不完全だからこそ助け合い、思いを託すのが人間だと叫ぶヒロム。そして、5人が力を合わせたボルカニックバスターによって、ついにエンターを撃破。彼は気づいていたのでしょうか。バックアップを失ったことによって「死」を得たこと、これまでになく「命」に近づいていたことに。オーズのアンクはそれを喜びながら消えていきましたが、アンクのように人と触れ合うのではなくただデータのみを求めて人間に近づこうとしたことが、エンターの間違いであり不幸でした。

 崩壊を始める亜空間。一度は運命を共にする覚悟を決めたヒロム達だったが、消滅したはずのマサトとヒロムの父に叱咤され、最後の力を振り絞って亜空間からの脱出に成功。こうして、ゴーバスターズの長い戦いは終わった。ヨーコは高校に入学。リュウジは念願だったエンジニアへの道へ。Jは・・・なぜか森の管理人に。こんなロボ丸出しの奴が森の管理人というのも妙ですが、最後までJらしいです。そしてヒロムは、姉さんとニックとの生活に戻る。コックの帽子をかぶって料理をするニックに、以前自分の方向性をいろいろ模索した中の天才シェフに本気でなる気かと思いました。これからどうするとニックに問われ、「ゆっくり考えるよ、13年分」と答えるヒロム。13年間すべてを両親を助けるために費やし、さらにその上、両親やマサトを犠牲にしなければならない選択肢を否応なしにとらなければならなかったヒロム。戦いを終えた彼にようやく自分のことを「ゆっくり考える」自由と時間が与えられたことに、何より安堵しました。

 多くの犠牲を払いながらも、ようやく終わりを迎えたゴーバスターズの物語。決してご都合主義に終わらない、ある種シビアで残酷な道をたどりながらも、それでも最後は一抹の寂しさと、未来への確かな希望を感じさせるかたちで終わった最終回に、やっぱり小林靖子脚本はいいなぁと思いました。シリーズ35作目の節目としてその総決算を果たしたゴーカイジャーの後を受け、シリーズの新たな一歩としての役割を負わされたゴーバスターズ。それまでの定型的な演出を廃したりロボ戦を前面に押し出したりと、新たな試みには戸惑いもありましたが、その意欲的な試みは確かに新たな1ページをシリーズの歴史の中に刻み込んだと思います。そしてなにより、エンターの存在の果たした役割について語らないわけにはいかないでしょう。最初から最後までゴーバスターズの裏をかき、上を行く活躍を見せ続け、後半には人間に対する歪んだ憧れを見せた彼の存在なくして、ゴーバスターズは魅力ある物語とはならなかったでしょう。もう一人の主人公と言ってもおおげさではないのではないでしょうか。スーパー戦隊の歴史のみならず、日本の特撮ヒーロー作品全体を見回しても稀有な悪役となった彼を、独特な雰囲気と色気をもって演じきった陣内さんには、惜しみない拍手を贈りたいです。オルヴォワール、エンター。

 毎年恒例、提供でのレッドからレッドへのバトンタッチも終え、いよいろ来週からは新戦隊、キョウリュウジャーの活躍が始まります・・・が、スーパーヒーロー大戦Z、さらにはVシネと、ゴーバスターズの活躍もまだまだ続きそうですね。最後までお付き合いします。