BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ゴジラ('84) 感想

 何度も見ている映画ですが、BSプレミアムゴジラ映画特集で流れていたので。

 沢口靖子の演技とかエンディングの歌とかについてはまぁ言わずもがな。やっぱり肝心のゴジラがどうにも空っぽというか、復活を望む声に推されて蘇ったはいいものの、戦争の記憶も核の脅威も30年前と比べてすっかり遠のいてしまった時代において自分に求められているものが何なのかよくわからないまま、とりあえず街を壊している、というようなどうにも宙ぶらりんな印象が、私の中でこの映画のゴジラにはあるんですよね。戦争や核の象徴として人間を恐怖のどん底に叩き落とした初代はもちろん、一人でも多くの人間を殺してやるという殺意や執念を見せた「GMK」のゴジラ、次から次へと喧嘩を挑んでくる奴が気に入らないからぶちのめすという単純明快な怒りに満ちた「ファイナルウォーズ」のゴジラみたいなものが、どうもこのゴジラからは感じられないのです。超音波に誘導されて三原山の火口に落ちていく、というラストシーンが、この映画のゴジラの操り人形っぽい空虚さを象徴しているようにも思えます。

 とはいえ、ところどころキラリと輝くところもあるのがこの映画。特に小六禮次郎氏による音楽は、伊福部氏以外の作曲家の手によるゴジラ音楽としては最高傑作と言ってもよいのではないでしょうか。特にスーパーX登場のシーンは何度見てもテンションが上がります。ゴジラがビルに開けた穴越しに撃ちまくるシーンも実にかっこいい。そして忘れてはいけない、武田鉄矢氏演じるホームレス。「でっかい顔して歩いてるんじゃねぇ! この田舎モンが!」 これに勝る迷台詞はおそらく今後のゴジラ映画でも現れまい。