BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

仮面ライダー1号 感想

 本日公開の仮面ライダー45周年記念作品。「バットマンVSスーパーマン」も公開中ですが、連続で見るのはきついので来週に回すとします。

 最初に言ってしまえば脚本とか演出とか、一般的な映画の評価基準から見ればこの映画は駄作と言ってもしょうがないかと思います。ストーリーはお世辞にもよくできているとは言えないし、唐突に次の場面に切り替わる箇所がいくつもあって違和感があるし、ヒーロー映画の肝ともいえるバトルシーンにも、目新しいところはほとんどない。なにより上映中、親と一緒に子供が出ていくのを何度か見ました。子供の反応は正直だから、見ていてつまらないものには露骨に飽きてしまう。子供のこの反応こそが、この映画に対する何よりの評価だといえるでしょう。

 しかしこの映画には、他のどんな映画にもない、燦然と輝く一つの特徴があります。それは「藤岡弘、が演じる本郷猛が主役である」ということ。そんなこと当たり前じゃないか、と言われるでしょうが、この映画での本郷猛、いや、藤岡弘、の存在感は観てみなければ想像もつかないほどの濃密さ。まさに藤岡弘、藤岡弘、による藤岡弘、のための映画。全編に渡って藤岡弘、が醸し出す存在感の前には、共演するゴーストの出演陣はもちろん、地獄大使役で出演する押しも押されぬ日本ドラマのバイプレイヤー・大杉漣ですら霞んでしまう。もはや藤岡弘、は本郷猛を演じる必要すらありません。本郷猛はもはや藤岡弘、の一部であり、本郷猛が語る言葉の一つ一つが、そのまま藤岡弘、の言葉になっている。ここまで役と役者が一体となっている姿を見たことがなく、それにただただ圧倒されているうちに、本来ならば目についてしまう映画としての欠点がどうでもよくなってしまう、ものすごく特異な映画体験をさせてもらいました。

 ヒーローを演じた役者は、その後もついて回る自らが演じたヒーローのイメージによってしばしば悩まされます。しかし日本で最初に仮面ライダーを演じた男は、番組が終わった後も自分が演じたヒーローと真摯に向き合い続け、武道を通じて心身を鍛え続け、ボランティア活動に身を投じて困った人たちに手を差し伸べ、やがて現実において虚構のヒーローと一体となった。「ヒーローを演じた役者」としての一つの完成された姿を、この映画で見ることができました。映画の最後でタケルが言ったとおり、本郷猛は永遠の英雄なのです。