BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ウルトラマンタイガ 第10話感想

 タイガの年の離れた友人である絵描きの男、小田。その正体は、かつてブラックキングとのコンビで「夕映えの戦士」の有名を馳せたナックル星人オデッサだった。トレギアの姦計によって封印してきた戦いへの衝動を呼び起された彼とヒロユキとの間で展開される、悲しく美しい物語。

 

 かつては単なる悪役でしかなかった宇宙人たちの新たな一面をこれまでも描いてきたニュージェネレーションシリーズでしたが、今回はその中でもかなりの傑作でしたね。「帰ってきたウルトラマン」で郷秀樹の大切な人である坂田兄妹を殺した極悪宇宙人だったナックル星人が、こんなかたちで全く違うキャラとして登場するとは。小田の記憶にある「夕陽に立つウルトラマン」は、逆光で姿はおぼろげですが、間違いなくジャック。その姿は小田の言う通り美しいものでしたが、かつて大切な人達を奪った宇宙人と戦い、そして殺すことなく許した彼の心には、どんな想いが去来していたのでしょうか。キャラクターは今までとは全く異なりながら、夕焼けの中での戦いやブラックキングとのコンビなどは原点に忠実なのもポイントが高いです。美しい夕焼けを背に、小田の手紙の言葉が語られる中で無音で展開される激しい戦いが、美しくも悲しいものでした。「クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲」で、この映画の悪役であるケンは「夕焼けは人を振り向かせる」と語っています。夕焼けに人がノスタルジックな感情を呼び起されるのは、その日の太陽の最後の美しい輝きに自分の過去の美しかった部分を重ねてしまうからなのかもしれませんが、だとすれば夕焼けにこだわっていた小田は、トレギアが現れる前から自らの過去から逃れられずにいたことを改めて強調するようで、一層悲しいものですね。