BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

今週の動物戦隊ジュウオウジャー 最終回感想

 ついに訪れるジュウオウジャーとジニス、決戦の時。圧倒的な力でジニスがジュウオウジャーを苦しめようとする中、勝機をつかもうとする大和が見抜いた、ジニスの秘密。それはなんと、ジニスはメーバの集合体であったということ。悪の組織の首領の正体が戦闘員の集合体だったというのはなんとも新しいですが、自分以外の生物を下等生物と見下す視線、部下の死さえ余興として楽しむ冷酷さ、アザルドが自分と対等の立場を主張した時にそれを許さなかった傲慢さ、全てが自分自身が下等生物であることのコンプレックスであったというのは実に納得のいく設定です。もともと弱かったがゆえに強さに固執し、弱さを隠すために必要以上に傲慢にふるまうようになったというのは、ただ強いだけの悪役よりもよほど悪役として魅力的です。それでもジニスを受け入れ、守ろうとしたナリアの行動でさえ「同情」であり「最大の侮辱」として容赦なく切って捨てるジニス。他者が畏敬以外の感情を自分に向けることを許さないジニスは他者との関係を築くことすら否定しているに等しく、他者との「つながり」を力に変えて戦ってきたジュウオウジャーの最大の敵となるのは至極当然の結果だったと言えるでしょう。

 ジニスの攻撃によって王者の資格を破壊されるジュウオウジャー。それでも諦めず戦う彼らに地球が力を与え、王者の資格は復活し、逆にジニスは力を喪失。ここで最終回恒例の素面名乗りとなりましたが、通常の名乗りバンクと異なり、背景に映るのが各メンバーの変身前の顔というのがよかったですね。ただ、大和が野生大開放によりイーグル、ゴリラ、ホエールのすべての力を合わせて戦うのはよかったですが、他のメンバーにもそれぞれの攻撃が利いている描写は欲しかったですね。普通スーパー戦隊の最終回は巨大化戦→等身大戦となるのですが、今回はいつもどおり倒されたジニスが巨大化して復活。ワイルドトウサイドデカキングによってそれも撃破され、ついにデスガリアンとの戦いに終止符を打つことができました。

 こうして平和が戻り、セラたちジューマンは一度ジューランドに戻ることに。タイムレンジャーのようにレッド以外は異邦人という構成の戦隊ではおなじみの展開ですが、王者の資格、大王者の資格をリンクキューブに戻した瞬間、人間界とジューランドが融合するというまさかの展開に。人間界とジューランドの関係については、テーマとしては掲げられつつもあまりにも問題として大きすぎるのでこのまま終わるのはしょうがないとあきらめていたのですが、まさか二つの世界を一つにし、全ての人間とジューマンに課題として直面せざるを得ない状況を作り出す、という方向に持っていくとは夢にも思いませんでした。強引とも言われかねない大胆な方法ではありますが、作り手としてはやはり、二つの世界、二つの種族を断絶させたまま、他者との「つながり」の大切さを説いてきたこの物語を終えることはできなかったのではないでしょうか。ラリーさんが講演会で人間とジューマンの融和を説くなど、人間とジューマンの共存が順調に進んでいくような描き方で物語は終わりましたが、もちろん現実にはそう簡単にはいかないことぐらい、子どもたちにだってわかるでしょう。しかし現実の世界に目を向ければ、アメリカのトランプ大統領イスラム教徒の排斥を掲げ中東の一部の国からの入国を禁じたり、シリアからの難民を巡ってヨーロッパ諸国の世論が大きく揺れたりと、ジューマンどころか同じ人間同士でさえ、大きな断絶が進みつつあるのです。そんな世界の未来を担う子供たちに、他者との違いを認め合い、みんなでつながり合いながらともに歩んでいこうと最初から最後まで謳いあげたこの番組は、この時代だからこそ必要とされるものであると、私は思いました。

 大傑作、とまでは言えないものの、一つのテーマを貫いた作品としては、まぎれもなくスーパー戦隊シリーズの記念すべき40作目としての役割を、ジュウオウジャーは立派に果たしてくれたと思います。出演者、スタッフの皆さまには、心から感謝と拍手をお贈りします。