BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

仮面ライダーゼロワン 第3話感想

 社長業を学ぶため、自ら現場を回りヒューマギアを売りこむ営業活動を始めた或人。手始めに寿司屋「まごころ寿司」に寿司職人型ヒューマギア・一貫ニギローを売りこもうとするものの、頑固一徹の寿司屋の大将には受け入れてもらえず悪戦苦闘するが…。

 

 腹筋崩壊太郎に続き、寿司職人というこれまたクリエイティブな職人の世界にヒューマギアを売りこもうという話。寿司職人のような繊細な手つきが必要とされる職業にまで対応可能なヒューマギアを作れるとは、飛電インテリジェンスの技術力の高さがうかがえます。話自体はなんとなくいい話のように終わりましたけど、結局今まで弟子がやめていった理由は大将のあのよくわからない握り方を会得できなかったからであり、心がないがゆえに大将の厳しい態度もこたえず、ロボットであるがゆえに人間には困難なラーニングが可能なニギローにはそれができたというだけの話ですからね。あの握り方が実際に寿司の美味さにつながってるのなら何も問題はないのですが、もしこれが単に非効率で不合理なだけの命令だったとしてもヒューマギアは文句を言わず従ってしまうのか、ということを考えてしまいました。例えばブラック企業では、上司からのパワハラなどの問題は社員からの告発や健康を損ねる社員の出現、最悪の場合過労死の発生などにより明るみに出て是正されます(されない場合もありますが)。しかしこれがヒューマギアが働いている会社だと、ヒューマギアが上司のパワハラ行為に何も文句を言わないとするなら、ロボットなので健康を壊すこともなく、結果ブラック企業であることが顕在化せぬまま存続していく危険性があるのではないでしょうか。また、今回のまごころ寿司の場合、大将が引退したらニギローが店を引き継ぐことになる、つまり人間ではなくヒューマギアが店を経営することになりますがそれはいいのか、という問題もあります。こういう問題は寿司屋に限らず、後継者不足に悩む個人事業主が人間の代わりにヒューマギアを後継者にしようとしたらあちこちで起こりそうですが、この世界ではそれをどう解決しているのか…と、寿司屋とヒューマギアのお題だけでここまでいろいろ想像を膨らませてしまうのですから、やはりこの番組でのAIの取り上げ方の切り口はすごいです。

 

 一方、今回バルキリーへの初変身を遂げた唯阿についても、ヒューマギアをあくまで道具として割り切り或人や不破のような特別な感情は抱いていないというスタンスが明らかに。好きの反対は無関心と言いますが、その考えから言うなら、或人と正反対なのは彼女なのかもしれませんね。技術を道具として割り切るというのはある意味では正しいのですが、今のところ彼女には、技術者でありながら技術に対する「熱」を感じません。科学や技術を発展させてきたのは、よきにつけ悪しきにつけ、科学者や技術者の時に狂気を孕むほどの「熱」であったはず。技術を道具と割り切っている人間には技術をその先へと大きく進めていくことはできないと思いますが、彼女はこの先、どう変化していくのでしょうか。