BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス 感想

 コロナの影響で半年近く公開が延び延びになっていたタイガの劇場版がようやく公開。次のウルトラマンが既に始まっているのに一個前のウルトラマンの劇場版を見るというのはなんだか変な気分でしたが、早速見てまいりましたので、感想を。例によって若干のネタバレを含みますので、未見の方はご注意を。

 

 トレギアとの決着をつけた後、気合が入りすぎなぐらいにE.G.I.Sの職務に励むヒロユキ。そんなとき、トレギアの体に封じられていた邪神魔獣グリムドが復活し地球へ襲来。さらに、駆けつけたタロウがトレギアの策略によってグリムドを体内に吸収させられ、闇に堕ちてしまう。絶体絶命の危機の中、ヒロユキの前に次々と現れたのは、かつて自らの変身能力と引き換えにグリムドを結界に封じ込めた、歴代ニュージェネウルトラマンだった…。

 

 今回の劇場版は単なるタイガの劇場版というだけでなく、タイトル通りニュージェネレーションシリーズの一つの総決算、タロウとタイガの親子の絆、そしてヒロユキも加えたトライスクワッドの物語の締めくくりと、いくつもの意義を持っていましたね。まず、歴代ニュージェネウルトラマンの登場。歴代変身者が全員顔出しで出演するというだけでも、仮面ライダーストロンガー最終回の素顔の戦士全員集合と同じぐらいすごいことなんですが、単に登場するだけに留まらずそれぞれに相応しい描き方がされているのがよかったですね。特に、かつてのタロウの戦友としてタロウを救いたい気持ちを言葉の端々からうかがわせるヒカル、父と戦わなければならない辛さを共感しタロウを救うタイガの力となることを誓うリク、因縁あるトレギアに対して人の心はお前が思うほど弱くないと改めて叩きつけるカツミが印象に残りました。そして、圧巻の8人同時変身。ウルトラマンたちが次々に地上に降り立つさまは、タロウの名場面であるテンペラー星人戦でのウルトラ6兄弟勢ぞろいのシーンを思い出し、涙が出ました。

 

 本編では冒頭でのみ登場し、その後タイガがいくらピンチに陥ろうが、トレギアが拗れた感情を語ろうが、一切登場しなかったタロウ。まぁこれはタロウ本編でちょくちょくウルトラ兄弟や父が助けに来ていたことに対する反省もあったのかもしれませんが、地球人=ヒロユキとの絆を深め、真の意味でのウルトラマンへと成長したタイガが、親であるタロウを救うというこの劇場版で、見事にその甲斐はあったと思わせてくれますね。個人的にこれは、かつてタロウが主人公を務めた劇場版「ウルトラマン物語」を、踏襲したものであり、父親となりあの時のウルトラの父と同じ立場になったタロウの物語でもあると思います。特にクライマックスでのウルトラマンレイガへの変身は、「ウルトラマン物語」のクライマックスを彷彿とさせるものでした。

 

 そして、ヒロユキとトライスクワッドの絆と別れ。タロウが闇に堕ちたことショックを無理に強がって隠そうとするタイガに、辛いときはそれを隠すなと諭すヒロユキ。互いが年若いからこそ成立するこのウルトラマンと地球人との関係は、この作品ならではのものでした。いくつもの地球人とウルトラマンの絆を見てきましたが、彼ら4人の魂のつながりにはまた格別のものを感じました。

 

 最後に…このブログでのタイガの感想を見ていた方ならわかるとおり、トレギアが大嫌いな私としては、今回の映画でトレギアは完全に滅んだと思いたいのですが…。あいつについては、「真面目すぎた」の一言に尽きると思います。ウルトラマンというのはとてつもない力を持つ存在なわけで、そのウルトラマンが悪に堕ちたらその力を平和のためではなく自らの欲望のために思うまま振るうはず…という、誰もが思う「悪のウルトラマン像」として、ベリアルはあまりにも完成され過ぎていたのではないか。そのあとに出てきて、捻くれた理屈をこね回しながらも結局はヤプールの真似事のようなことしかできなかったのでは、トレギアがウケなかったのも当然です。ベリアルの二匹目の泥鰌を狙った結果、劇中でも10年も生きてないアンドロイドに底の浅さを痛烈に指弾されるぐらいになってしまったあいつも被害者と言えるのかもしれませんが、今後はやすらかに眠りにつくことを、ベリアル以上に願っています。

 

 本編はお世辞にも傑作とは言い難かったタイガですが、その締めくくりであるこの映画はまぎれもなく傑作です。これを見ずしてタイガを最後まで語ることはできないので、本編を見ていた方はぜひ劇場まで足を運んでいただきたいと思います。