相変わらずいろんなことがわからないまま話が続いていますが、それでも今回は桃井タロウの性格や過去の一端が明らかになりましたね。子供の頃からどんなことでもできて、なおかつ他人のために尽くすことが大好きだったが、それが行き過ぎたせいで逆に他人から嫌われ、自分の周りから誰もいなくなってしまった過去を持つ…。目が合っただけで「縁ができた」と言ってぐいぐい迫ってくるため「妖怪縁結び」とか公式にまで言われているタロウですが、この奇行もまた、その過去がトラウマとなって自分と他人を必死につなぎとめようとしているのかもしれない、と思いました。これってなんだか、同じ井上脚本の主人公でも、オルフェノクであるがゆえに他人を傷つけることを恐れ、積極的に人と関わり合おうとしなかったファイズの乾巧のアンチテーゼみたいです。
まぁ一言で言ってしまえば、融通が利かないのでしょうね。たいていの人間は向上の意欲を持っていますけど、向上のためには才能が必要なところもあり、努力や時間といったコストを支払う必要もある。どこまで向上したいかは、そういった個々人の事情によって決められるものであって、例えば「料理」という行為ひとつとっても、自分の食事を賄えることができればそれでいいという人もいれば、プロのシェフとなって三ツ星を取ることを目指す人もいる。タロウのやっていることは、そういった個々人の事情を無視して、自分の食事さえ賄えればよい人にそれではダメだとプロの料理人レベルになることを強要するようなものですから、これでは嫌われても当然です。それぞれの人間がそれぞれであるという多様性をあれだけ尊重したゼンカイジャーの次の作品で、自分の求めるレベルを他人に強要する奴を主人公に据えてくるって、相変わらずとんでもなく度胸がありますね、井上氏は。まぁ今回のラストを見る限り、タロウも自分のその欠点には無自覚ではなく彼なりに傷ついてはいるようなので、わかってはいるけれどどこまで他人のために干渉すべきか、そのラインを見極めることができずにいる、といったところでしょうか。嘘がつけないことといい、他人とのコミュニケーション面においていくつも欠落を抱えていそうなタロウですが、この先それは改善されていくのでしょうか。