BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ウルトラマンX 第20話感想

 突如地下駐車場に出現したスペースビースト。巻き込まれた女性をかばって瓦礫の下敷きになった橘副隊長だったが、そこにカナダに住んでいる娘から突如出現したベムラーによって窮地に陥っているという連絡が入り、彼女自身にもスペースビーストたちが迫る。絶体絶命の危機に陥ったその時、目の前に突然出現したスティックを手にした次の瞬間、彼女はウルトラマンへと変身していた・・・!

 というわけで、マックス、ギンガに続き客演となったウルトラマンネクサス編。かつてウルトラマンとは思えないほどのトラウマものの展開で物議を醸し、ファンの間でもいろいろな意味で記憶に残るウルトラマンとなったネクサス。特に物語の中で変身者であるデュナミストが次々と変わっていくのが大きな特徴であり、果たして今回の客演では誰が変身するのかと前々から話題になっていましたが・・・まさか橘副隊長が変身することになろうとは。今まで隊長の補佐に徹していて目立った活躍のなかった副隊長に、最後の最後にこんな役回りが用意されているとは全く予想もしていませんでしたが、ネクサス本編でもナイトレイダー副隊長である西条凪が一度だけ変身していることへのオマージュであるため、なってみればうなずける展開でした。

 ネクサスに変身した副隊長が最初に戦ったのは宇宙怪獣ベムラーウルトラマン第一作でウルトラマンが最初に戦った記念すべき怪獣ですが、ネクサスの前章的な作品である「ULTRAMAN」に登場したビースト・ザ・ワンの元ネタがベムラーであるため、これもオマージュとなっていますね。そしてネクサスの主人公であり、本編では最後のデュナミストとなった孤門一輝を演じた川久保拓司氏が副隊長の夫役でゲスト出演。見上げる彼をネクサスが見下ろすカットは、ネクサス第一話ラストと構図が同じという心憎い演出。

 そして、ダークサンダーエナジーによって巨大化したスペースビースト・バグバズンに苦戦するエックスを助けるため、再びネクサスへと変身して戦う副隊長。ネクサスのバトルの特徴である異空間メタフィールドを展開し、BGMも川井憲次氏の当時のものに! 二人のウルトラマンの前にスペースビーストなどは敵ではなく、見事バグバズンを撃破するのでした。

 戦いが終わり、大地が副隊長のもとへ駆けつけると、彼女の手の中でエボルトラスターは消滅。しかし彼女は、ネクサスからの伝言である「諦めるな」というメッセージを大地に届ける。「諦めるな」、それはネクサス本編でも重要な意味を持つ言葉。そして副隊長は「絆」という意味を持つネクサスの名を、自然に口にするのでした。

 ネクサスでもメガホンをとっていたアベユーイチ監督が当時の「阿部雄一」名義で撮っただけあり、随所にオマージュが取り入れられたネクサスへの愛のある作品でした。ウルトラマンティガの最終回で「人は誰でも光になれる」ことが示され、それはのちに平成ウルトラシリーズを貫いていく概念となっていったわけですが、諦めを拒絶する強い心をもつ人ならば誰もがウルトラマンになれる資格があり、そういう人から人へとデュナミストの資格とともに受け継がれていく絆を描いたネクサスは最もそれを体現していたんじゃないかと、そんなことを思いました。ネクサスの登場人物ではなく、Xの登場人物である橘副隊長が変身するという一見驚きの展開も、ネクサスが「受け継がれる絆」を体現するヒーローである以上、これ以上ないぐらい相応しいものでした。「諦めるな」という言葉だけを残し、再び去っていったネクサス。ネクサスという名の光の絆は、これからも人から人へと受け継がれていくことでしょう。