BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

SSSS.GRIDMAN 第1話感想

 かつて「ウルトラマン80」の放送終了から「ウルトラマンティガ」の放送開始までのあいだ、ウルトラマンの姿をリアルタイムでテレビで見られない状況が実に16年もの間続いた時代がありました。80年代から90年代、ウルトラシリーズに限らず特撮番組全体が下火の状況が続いたこの特撮冬の時代に少年時代を過ごした私のような特撮ファンには、思い出深い一つの番組があります。その名は「電光超人グリッドマン」。1993年に放送され、まだインターネットはおろかパソコンさえ家庭に普及していない時代でありながら、コンピューターワールドを舞台に怪獣と戦うヒーローを描いた斬新な作品は、リアルタイムで応援することのできる「僕たちのヒーロー」を求めていた私のような子供にとっては、まさにヒーローでした。コンピュータを題材にしたことの先進性がよく採り上げられますが、それまでのウルトラシリーズとは異なり防衛チームは登場せず、物語はあくまで一般人である主人公たちのまわりで展開されるという形式は、今にして思えばギンガ以降のニュージェネレーションシリーズでスタンダードなものとなった物語の先駆けとなったという解釈もできそうですね。

 そんなグリッドマンの放送から、実に四半世紀。今やウルトラシリーズの新作をTVで毎年見られるという、あの頃には想像もつかなかった幸福を我々は享受していますが、そんな中、ついにグリッドマンが復活する日がやってきました。それも、アニメで。

 そんなわけで第1話を見たわけですが、前半は少々戸惑いました。主人公が記憶喪失なのを除いては、あまりにも平凡な学生たちの風景。記憶喪失に関して本人も周囲も取りたてて大騒ぎすることもなく、ちょっと困ったぐらいの感じでとりあえず過ごしていく。まぁこういう空気感は最近のアニメでは珍しいものではないのはわかっていましたが、それでも、ここからグリッドマンウルトラシリーズのようなノリにどう近づいていくのかと戸惑いました。

 それが一点、怪獣が登場したとたんに「なんということでしょう」と言ってしまいそうになるぐらい、怪獣映画の空気に早変わり。地響きによって揺れる電線、めくれ上がる道路の舗装、ビルの間から通過していく怪獣の横顔をとらえたところなど、ウルトラシリーズや怪獣映画のファンが見たら「わかってる!」と叫びたくなること間違いなしの演出の連続。怪獣そのものもリアルな生物としてではなく、「中に人が入ってる」感がものすごく出ていました。特にのちに弱点と判明する首の部分に関しては、揺れ方が「ああ、人が動かしてるのは胴体まででここには何にも入ってないんだな(笑)」というのが丸わかりなのが、感動してよいのかどうかよくわからない謎の感動がありました。また、怪獣映画的な画面をリスペクトする一方、吹き飛ばされた自動車がビルの窓に突っ込んでいるという、特撮では見たことがないカットも見られたので、こういうところはどんどん特撮にも逆輸入してほしいですね。

 そして、今回は「アクセスフラッシュ」はありませんでしたが、ついにグリッドマンが登場。まず着地の時点で感動しました。着地と同時に派手に砂埃が起こるあの演出、特撮ファンなら言うまでもなくウルトラマンガイアから本格的に使われ出したもので(初使用はダイナ)、当然グリッドマンの頃にはまだなかった演出。それを今グリッドマンがやるというのが、グリッドマンウルトラシリーズを見てきた人間としてはグッとくるものがありました。怪獣同様グリッドマンの動きも、実写のスーツの動きを細かく取り入れたもので、特撮と同じものをアニメで見ているとしか思えません。そもそも、かつてはコンピュータワールドの中だけで戦っていたグリッドマンが、現実の街並みの中で戦っているというだけでも興奮します。エネルギーランプ点滅の効果音も同じだし、グリッドマンがダメージを受けると火を噴くジャンク、ジャンクを通してグリッドマンに指示を出す主人公の仲間など、見ていて「そうそう、グリッドマンてこれ!」とうなずく展開の連続。トドメの「グリッドビーム!」の掛け声を一緒に叫んだのは言うまでもありません。

 第1話を見終えてみれば、とても忠実にかつてのグリッドマンを踏襲していましたね。グリッドマンと一体化して戦う主人公にはそれをサポートする同級生の仲間がいて、一方、怪獣の人形を作る何者か(イラストではなく人形なのは、三次元の空間に実体化させるための変更か?)と、それを実体化させるカーンデジファーみたいな敵がいる、という基本構造は全く同じ。それを踏襲したうえで、単純明快な一話完結の物語だった特撮版にはなかった複雑な謎を縦糸として織り交ぜていく、というかたちで展開していくのでしょう。これはもう期待して見続けていくしかありません。