BLACK DODO DOWN

HN:影月。「怪」のつくものを好み、特撮・ゲームを中心に、よしなしごとをそこはかとなく書き付くる。

ウルトラマンブレーザー 最終回

 月面での戦いでヴァラロンを食い止められなかったSKaRDは、ヴァラロンを追って地球へ。一方その頃、V99の真実に迫りつつあったエミはドバシの配下によって監禁されていた。ヴァラロンとの最後の決戦が幕を開け、さらに地球にはV99の船団までが飛来する…。

 

 ついに訪れた最終決戦。地球へ連れ帰ったものの活動停止したままのブレーザーに、この決戦はSKaRDだけで臨むと告げるゲント隊長でしたが…いやぁ、ブレーザーが初めて言葉を発したのにも驚きましたが、それが「俺も行く」という、ゲント隊長の「俺が行く」に対するアンサーであったことに、始まって早々泣きそうになってしまいました。そしてそのブレーザーの言葉を黙って受け止めテルアキ副隊長に指揮権を委譲して、再びブレーザーと一体になって最後の戦いに臨むゲント隊長。咆哮しか発しない異星からの巨人とともに戦い続けることで、ついに「俺も行く」の一言だけで全てが通じ合えるようになった。今まで様々な人間とウルトラマンの絆を見てきましたが、言葉を介さずともここまでの関係性を築き上げることができたのは、まさに感無量でした。

 

 ヴァラロンと激闘を繰り広げるブレーザーに、応急修理を完了したアースガロンが加勢。しかしそこにさらに、多数の怪獣を収めた球体を搭載したV99の船団が飛来。ドバシは各国の基地に迎撃を命じましたが、そこにハルノ参謀長によって救出されたエミが乱入、参謀長が回収していた父の手記から得たV99についての真相について暴露する。1999年に飛来したV99の宇宙船はドバシの命令によって撃墜されたが、その残骸からは兵器に類するものは一切発見されなかった。つまり丸腰の相手を撃ったわけで、バザンガに端を発する一連の宇宙怪獣の襲撃はその報復だった、と。新天地を求めて未知の宇宙を旅する宇宙船は丸腰だったのに、強力な宇宙怪獣を生物兵器として擁しているというのは、V99とはどういう連中なのか…。ともあれ、ここで船団に対して攻撃を仕掛ければ、今度こそV99との間で取り返しのつかない争いが始まってしまう。そこでエミはアースガロンもまた撃墜されたV99の宇宙船から開発された技術によって作られたことから、アーくんを介してV99に敵意がないことを伝えるメッセージを送らせ、断片的な単語のやり取りながらも意思疎通に成功。しかしV99から送られてきたメッセージから彼らがこちらに恐怖を抱いていることが判明したため、船団への攻撃を中止するのみならず、ヴァラロンと交戦中のブレーザーとアースガロンも武装を解除して敵意がないことを示し、さらにエミが「未来」というメッセージをV99に送ったことで、船団もその意思を理解して去っていったのでした。特空機と異なり怪獣の撃破スコアでは実績の芳しくなかったアースガロンでしたが、最後の決戦で言葉によって二つの文明が破局的な争いに向かうことを回避するというこの上ない成果をあげたことは、まさに「コミュニケーション」をテーマにしたこの作品らしい成果でしたね。

 

 V99は去ったもののヴァラロンは残されたまま(まぁV99としても、これ以上の争いは望まないとしてもそれで丸腰の同胞を殺されたことまで水に流すというわけにはいかないでしょうし、こいつを倒してみせればそれで手打ちとする、というつもりで置いてったのか)だったので、戦闘を再開するブレーザーとアースガロン。頭をスパイラルバレードで貫かれても暴れ続けるなどさすがのしぶとさを見せブレーザーとアースガロンを苦戦させるヴァラロン。その時、テレビでブレーザーを応援していたジュンとサトコの声が届いたかのように、ゲント隊長がつけていた結婚指輪とジュンのプレゼントのブレスレットが光り輝き、ブレーザーが十字に組んだ腕から必殺の光線が放たれる! いやあ、レインボー光輪が登場したときにだんだん必殺技がウルトラマンらしいものに変わっていっているような感じはしていたので、最終的には定番の腕を十字やL字に組んで放つ光線になるんじゃないかなとはちらっと思ってはいたのですが、まさかそれが現実になるとは驚きでした。ウルトラマンと会話したり、腕を十字に組んで必殺光線を放ったり、そんなこれまでのウルトラマンでは当たり前だったことが最後の最後になって起こることが感動を呼ぶとは、つくづくウルトラマンとして規格外の作品です。あとから発表されたこの光線の名は、その名も「ブレーザー光線」。レインボー光輪などと同じく何のひねりもないそのままの命名ですが、ゲント隊長たちとブレーザーが築き上げてきた絆の結実した必殺技として、これ以上のものはないネーミングでしょう。そしてこの光線によってヴァラロンは跡形もなく消滅。少なくともV99に端を発する宇宙怪獣の襲来には終止符が打たれ、ゲント隊長は愛する家族が待つ我が家へと笑顔で帰宅するのでした…。

 

 第1話、怪獣を相手に獣のように吠え、飛びかかり、これまでのウルトラマンの洗練された戦闘スタイルとはかけ離れた、まるで未開の部族の戦士のような戦いぶりを見せるブレーザーに、「こいつは本当にウルトラマンなのか?」という強い衝撃と驚きをもって始まったこの作品。登場する怪獣の多くが今作で初めて登場する怪獣という近年稀に見る豪華な体制と、それに見合った魅力あふれる脚本の物語が展開される中で、従来の作品とは異なり主人公でさえ会話することすらできないウルトラマンと防衛チームとがともに戦い、徐々に信頼を築き上げていくという異色の物語に、毎回毎回夢中になりました。第1話の時点でこれは今までに見たことのないウルトラマンになるぞとは思っていましたが、最終的にはその予想をはるかに上回るかたちで、ウルトラマンの歴史に全く新しい1ページを刻む作品になったと思います。まだ劇場版が残っていますが、この素晴らしい作品を作り上げた出演者、スタッフの皆さんに、心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。